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大乗仏教
出典:安藤希章著『神殿大観』(2011-) 最終更新:2017年7月30日 (日)
大乗仏教は、東アジアなどに広がった仏教の一派。北伝仏教とほぼ同じ意味。中観思想、唯識思想、華厳思想、法華経信仰、浄土教、禅、密教など様々な思想・潮流が起こった。
開祖釈迦以外に諸仏、諸菩薩、護法神などを崇め、宇宙の根源的な存在として大日如来、久遠実成の釈迦如来、久遠実成の阿弥陀如来などを想定した。関連して仏像・仏画・仏塔など多彩な仏教美術や仏教建築を生み出した。僧侶・僧伽を絶対視せず、在家の立場を重視し、利他行を推奨する。特に、悟りの位にあえて就かず衆生の救済に励む存在を称える菩薩思想は大乗仏教思想の要とも言える。
あらゆるものに仏性の存在を認める如来蔵思想(本覚思想)も広く受け入れられている。『法華経』では誰でも解脱できると説き、ありとあらゆる存在が成仏できるとし(一切衆生悉有仏性、一切衆生皆成仏、草木国土悉皆成仏)、極欲にまみれた信を持たない者でも成仏できるとした(一闡提成仏)。また本来、解脱には途方もない時間が掛かるとされたが、天台宗の円頓止観や密教の即身成仏思想など、現世で直ちに悟りを得られるとする思想も生まれた。呪術には肯定的で、他宗教に対しては一面では妥協的態度を取りつつ、併呑して支配下に置こうとする傾向もある。『金光明経』や『法華経』にみられる鎮護国家思想も無視できない。
目次 |
宗派
律宗
中観派系
中観派は、般若経典の説く「空」思想を研究する宗派。龍樹を開祖とする。龍樹の『中論』が主要経典。提婆(アーリヤデーバ)、羅〓羅(ラーフラバドラ)、仏護(ブッダパーリタ)、清弁(バーバビベーカ)、月称(チャンドラキールティ)、観誓、寂天(シャーンティディーヴァ)などがいる。ナーランダー寺院の寂護(シャーンタラクシタ)、蓮華戒(カマラシーラ)がチベットに伝え、栄えた。チベットでは自立論証派と帰謬論証派に別れた。インドの獅子賢(ハリバドラ)も著名。マーディヤミカ、甚深見流ともいう。
- 三論宗:般若経典を註釈した龍樹『中論』と『十二門論』、提婆の『百論』を所依経典とする宗派。『三論玄義』を著した吉蔵を開祖とする。鳩摩羅什の漢訳から僧朗、僧詮、道生、曇済、法朗らを経て吉蔵に伝わる。日本には高麗の慧灌が伝え、大安寺流と元興寺流が興った。智蔵、道慈、勤操、玄叡、聖宝、永観、聖守らが著名。聖宝が建てた東大寺東南院が拠点となり、江戸時代末まで続いた。中国十三宗、南都六宗の一つ。空宗、中観宗、無相宗ともいう。
- 中道宗:龍樹『中論』を所依経典とする宗派。神印宗と合流して中神宗となる。
- 成実宗:獅子鎧(訶梨跋摩、ハリバルマン、250頃-350頃)の『成実論』を所依経典とする宗派。上座部の経量部の影響を受けている。四諦を研究する。『成実論』を漢訳した鳩摩羅什の弟子の僧導、僧嵩が宣揚。梁代に興隆し、開善寺智蔵・荘厳寺僧旻・光宅寺法雲の三大法師が重視したが、唐代以降は衰退した。日本では百済の道蔵が最初に『成実論』を伝え、註釈を書いたとされる。三論宗の付宗とされた。中国十三宗、南都六宗の一つ。
- 自立論証派:チベット中観派の分派。清弁(バーバビベーカ)を継承する。スヴァータントリカ。
- 帰謬論証派:チベット中観派の分派。仏護(ブッダパーリタ)、月称(チャンドラキールティ)を継承する。プラーサンギカ。
唯識派
唯識派は、唯心論を唱える宗派。上座部の経量部の影響を受けていると言われる。弥勒(マイトレーヤナータ、350頃-430頃)、無著(アサンガ、阿僧伽、395頃-470頃)、世親(ヴァスバンドゥ、400頃-480頃)が確立した。『解深密経』や『瑜伽師地論』(瑜伽論)を基礎経典とし、世親の『唯識三十頌』を重視する。代表的な学僧として陳那(域龍、ディグナーガ)、無性(アスヴァバーヴァ)、安慧(スティラマティ)、護法(ダルマパーラ)、戒賢(シーラバドラ)、法称(ダルマキールティ)がいる。中国・日本の法相宗につながる。瑜伽行派、瑜伽行唯識派、瑜伽宗、広大行流、唯心流、ヨーガーチャーラともいう。
- 無相唯識派:安慧、真諦(パラマールタ)と伝わる。究極的に阿頼耶識を否定。中国の摂論宗につながる。その後のインドでは、アティーシャの師の一人として知られるラトナーカラシャーンティ(シャーンティパ)らが活躍。古唯識。
- 有相唯識派:陳那、無性、護法、戒賢、玄奘と伝わる。中国の法相宗につながる。その後のインドではジュニャーナシュリーミトラ(980頃-1030頃)や、アティーシャの師の一人として知られるラトナキールティ(1000頃-1050頃)が活躍。
- 法相宗:玄奘(602-664)弟子の窺基(基、632-682)を開祖とする。護法の『成唯識論』を所依とする。窺基の記した『成唯識論述記』(述記)を根本注疏とし、窺基『成唯識論掌中枢要』(枢要)、第二祖慧沼の『成唯識論了義燈』(了義燈)、第三祖智周の『成唯識論演秘』を唯識三箇疏として重視する。日本には道昭が伝えた。奈良時代、元興寺の南寺伝と興福寺の北寺伝に別れ、興福寺伝法院を立てた修円の系統の伝法院門徒もあった。鎌倉時代には貞慶が復興した。新羅の円測も著名。中国十三宗、南都六宗、新羅五教の一つ。慈恩宗、唯識宗ともいう。
- 摂論宗:真諦(パラマールタ)(499-569)が開祖。無著の『摂大乗論』と世親の『摂大乗論釈』を所依経典とする。真諦が『摂大乗論』を漢訳。隋代、地論宗の曇遷(542-607)が華北に伝え地論宗北道派を吸収して盛んとなるが、玄奘が新訳摂大乗論を訳し、窺基の法相宗が盛んになると衰退。法相宗に吸収された。唐代の迦才(生没年不詳)も元は摂論宗を学んだ。日本にも伝来し、奈良時代の史料にわずかに記述があり、大安寺や元興寺で学ばれた。中国十三宗の一つ。古唯識とも呼ばれる。
- 倶舎宗:世親『倶舎論』を所依とする宗派。アビダルマを研究する。『倶舎論』は、上座部の説一切有部の教学を経量部の視点を取り入れながら批判的にまとめた経典。中国では南北朝時代に説一切有部の教学を研究する毘曇宗が生まれた。これを母体として倶舎論旧訳を訳した真諦の弟子の慧〓や道岳が研究を始め、倶舎宗として成立。玄奘が新訳倶舎論を訳すとその弟子の神泰や普光、法宝、円暉らが盛んに研究した。日本では法相宗の寓宗で、用滅説の南寺伝と体滅説の北寺伝に別れた。中国十三宗、南都六宗の一つ。毘曇宗、阿毘曇宗とも。日本では薩婆多宗ともいう。
- 地論宗:華厳思想とも関係。中国十三宗の一つ。
- 因明:唯識研究に伴い発展した仏教論理学。世親、陳那が興隆させ、法称が大成した。ラトナーカラシャーンティ、モークシャーカラグプタも有名。仏教以外のインドの諸学問にも大きな影響を与えた。中国・日本には、世親の流れの旧因明と、陳那の流れの新因明のみが伝わり、法称以降のものは伝わらなかった。因明学、正理学ともいう。
華厳系
- 華厳宗:『華厳経』を所依経典とする宗派。開祖は隋代の杜順。中国十三宗、南都六宗、新羅五教の一つ。朝鮮では円融宗ともいう。
- (朝鮮)海東宗:元暁派。法性宗、芬皇宗ともいう。新羅五教の一つ。
- (朝鮮)浮石宗:義相派
- (朝鮮)道門宗:
- 白雲宗:宋代、白雲山庵に住した清覚(1043-1121)を開祖とする華厳宗系の宗派。異端とされ、元代や明代に禁教になった。
- 地論宗:『十地経』(『華厳経』の一章)、世親『十地経論』を所依経典とする宗派。浄影寺慧遠が代表的な僧侶。北魏時代に菩提流支、勒那摩提の二人が中国に請来。梁、陳、隋代には興隆した。北道派と南道派に別れた。北道派は摂論宗に吸収される。南道派は唐代に盛んになった華厳宗に吸収された。中国十三宗の一つ。
- 南道派
- 北道派
法華経信仰
- 天台宗:中国十三宗の一つ。
- 山家派:四明派とも。
- 広智家
- 神照家
- 南屏家
- 山外派
- 雑伝派
- (朝鮮)法事宗
- (朝鮮)疏字宗
- (日本)山門派
- (日本)寺門派
- 山家派:四明派とも。
- 日蓮宗
- 一致派
- 勝劣派
- 不受不施派
- 富士派
- 涅槃宗:『大般涅槃経』。道生や慧観が創始。天台宗に吸収された。中国十三宗、新羅五教の一つ。始興宗ともいう。
浄土教
- 中国浄土教:中国十三宗の一つ。
- 慧遠流
- 道綽善導流
- 慈愍流
- 繋念会
- 白蓮社:廬山慧遠が開祖
- 浄業会
- 白蓮宗:慈照子元が開祖。
- 日本浄土教
- 天台宗
- 浄土宗
- 浄土真宗
- 時宗
- 融通念仏宗
- 普法宗:三階教として知られる。隋代の信行が開祖。
禅宗
- 禅宗:中国十三宗の一つ。
- 牛頭宗
- 北宗:早く廃絶
- 南宗:五家七宗の系統
- 五家七宗
- 雲門宗
- 法眼宗
- 曹洞宗
- イ仰宗
- 臨済宗
- 黄龍派
- 楊岐派
- 朝鮮禅宗
- 禅寂宗
- 曹渓宗
- 日本禅宗
- 臨済宗
- 日本達磨宗
- 曹洞宗