大江護国神社

出典：安藤希章著『神殿大観』（2011-）最終更新：2023年7月8日 (土)

大江護国神社は大阪府大阪市天王寺区夕陽丘町にある招魂社。官祭招魂社。指定外護国神社。大江神社内。境内に阿倍野官修墳墓があったが阿倍野墓地に改葬された。天王寺招魂社、大江招魂社、夕陽丘護国神社。

1869年(明治2年)8月18日、山口藩大阪屋敷在勤者によって創建された。1864年(元治1年)の禁門の変以降の京阪で殉難した藩士宍戸久之進ら48柱を奉斎した。間口3尺、奥行3尺の流造の社殿だった。同時に墓碑48基も建てられた。その後、山口県同郷会が維持。1887年(明治20年)に社殿改修。これを機に、墓碑48基は阿倍野墓地に改葬された。1888年(明治21年)7月16日、毛利元徳らによる請願で官祭招魂社となった。1874年(明治7年)の国の調査で官祭招魂社になるべきところを漏れていたらしい。1919年(大正8年)11月、陸軍特別大演習で武庫離宮に行幸中の大正天皇が勅使海江田侍従を勅使として差遣。祭祀料を下賜。1932年(昭和7年)11月、大阪奈良陸軍特別大演習で昭和天皇が川岸侍従武官を差遣。祭祀料を下賜。1952年(昭和27年)10月9日、大江護国神社祭神は大阪護国神社に合祀された。（『大阪護国神社五十年史』）

祭神

名前は阿倍野官修墳墓の墓碑銘に基づく。順番は大江護国神社の「旧山口藩殉難諸士招魂之碑」に基づく。ほかは時山弥八1913『旧長藩殉難者名録』に基づく。「自然堂～幕末史蹟訪問～」[1]や「至誠殉国の英霊を想う」[2]も参照。
全員が靖国神社に合祀されている（旧長藩殉難者名録）。

大江護国神社祭神・阿倍野官修墳墓被葬者
順番	墓碑配置	名前	所属	死去	死因	享年	備考
1	奥	宍戸久之進源知房	寄組士伸嫡子福原勢	1864年(元治1年)7月26日	牢死	19	千日獄舎で獄死。
2	奥	上田亀之進源宣重	八組士寛治嫡子福原勢	1864年(元治1年)7月29日	牢死	31	千日獄舎で獄死。
3	奥	市川孫七藤原寿列	無給通士福原勢	1864年(元治1年)11月3日	刑死	33	士分。桜宮で処刑。萩俊光寺にも墓。
4	奥	粟屋又助源照道	遠近付士福原勢	1864年(元治1年)11月3日	刑死	30	士分。桜宮で処刑。亦助とも
5	奥	吉井千代熊服部義俊	八組士千熊嫡子福原勢	1864年(元治1年)11月3日	刑死	26	士分。桜宮で処刑。
6	奥	景山勝三郎藤原貞英	遠近付士福原勢	1864年(元治1年)11月3日	刑死	24	士分。桜宮で処刑。影山とも。
7	奥	江津甲之進源暉道	遠近付士福原勢	1864年(元治1年)11月3日	刑死	30	士分。桜宮で処刑。
8	奥	須子吉次郎詮久	遠近付士乙之助養子福原勢	1864年(元治1年)11月3日	刑死	30	士分。桜宮で処刑。
9	奥	高橋武熊源保行	山口後河原住新作の男鴻城隊	1864年(元治1年)12月7日	牢死	不詳
10	奥	岸本敬三郎菅原嶂行	蔵元附平三男鴻城隊	1865年(慶応1年)1月14日	牢死	不詳
11	南	本多政之助藤原忠則	来栖組次郎次男奇兵隊	1865年(慶応1年)5月27日	牢死	21	足軽？。本田。桜山招魂社にも奉斎。
12	北	佐々木五右衛門源綱孝	蔵元附光平弟奇兵隊	1865年(慶応1年)1月2日	牢死	26	足軽。桜山招魂社にも奉斎。27歳とも。
13	南	水井精一通一	蔵元付興作弟義勇隊	1864年(元治1年)2月26日	自殺	26	加徳丸襲撃事件で身代わりに南御堂で自害。
14	北	山本誠一郎朝正	杉原組興三育義勇隊	1864年(元治1年)2月26日	自殺	32	加徳丸襲撃事件で身代わりに南御堂で自害。
15	南	山本文之助鑑光	来栖源兵衛組竹内正兵衛手附	1864年(元治1年)7月19日	自殺	29	尼崎まで逃げて捕縛され自害。「残念さん」と呼ばれる。尼崎の杭瀬東墓地にも墓がある。
16	北	大原六太郎	（不詳）	1865年(慶応1年)1月22日	牢死	不詳
17	南	今井平蔵	桂勝三郎臣	1864年(元治1年)12月6日	牢死	25
18	北	松本松蔵	白井良三郎臣	1864年(元治1年)12月16日	牢死	21
19	南	藤井駒吉	（不詳）	1864年(元治1年)11月7日	牢死	41
20	北	高橋荘三郎	（不詳）	1864年(元治1年)11月1日	牢死	不詳
21	南	井原繁三郎	岩国の卒	1864年(元治1年)12月1日	牢死	38
22	北	市木和十郎	岩国の卒	1865年(慶応1年)1月17日	牢死	22
23	南	上田梅次郎	福原農兵福原勢	1864年(元治1年)9月28日	牢死	22	維新招魂場にも奉斎。
24	北	兼安栄蔵忠兼	福原の中間福原勢	1864年(元治1年)10月25日	牢死	不詳	維新招魂場にも奉斎。
25	南	林政右衛門	福原の銃卒福原勢	1864年(元治1年)10月8日	牢死	38	維新招魂場にも奉斎。
26	北	森田吉治郎	京都作事方小使	1864年(元治1年)	牢死	不詳	森田吉次郎。
27	南	永井吉三郎	藤山組京都藩邸詰小使	1864年(元治1年)	牢死	不詳
28	北	徳富新太郎徳忠	福原銃卒吟蔵倅福原勢	1864年(元治1年)	牢死	19	維新招魂場にも奉斎。
29	南	林政之進	福原銃卒政右衛門倅福原勢	1864年(元治1年)	牢死	不詳
30	北	河内弥四郎勝成	福原の中間福原勢	1864年(元治1年)	牢死	33
31	南	三隅芳兵衛	福原農兵福原勢	1864年(元治1年)	牢死	25	維新招魂場にも奉斎。
32	北	正木瀧蔵	福原の農兵福原勢	1864年(元治1年)	牢死	28	維新招魂場にも奉斎。
33	南	秋元作兵衛	福原農兵福原勢	1864年(元治1年)	牢死	28	維新招魂場にも奉斎。
34	北	宮重勝市	田中清助小者	1864年(元治1年)	牢死	22
35	南	中村荘七	福原農兵福原勢	1864年(元治1年)	牢死	不詳
36	北	田中荘蔵	福原の農兵福原勢	1864年(元治1年)	牢死	45	維新招魂場にも奉斎。
37	南	藤井勇治忠直	福原農兵福原勢	1864年(元治1年)	牢死	41
38	北	松宮震一	（不詳）	1864年(元治1年)12月16日	牢死	不詳	奇兵隊弓隊
39	南	佐太郎	当島農瀬川富五郎小者	1864年(元治1年)	牢死	22	小者
40	北	宗次郎	東万倉農庄吉倅	1864年(元治1年)	牢死	27	小者。総次郎とも。
41	南	茂蔵	（不詳）	1864年(元治1年)	牢死	不詳	小者。山口藩出身で大坂在住。義蔵とも。
42	北	兼太郎	熊毛の農浦忠三郎小者	1864年(元治1年)	牢死	18	小者
43	南	三吉	須子吉次郎小者	1864年(元治1年)	牢死	25	小者
44	北	岩吉	市川孫七中間	1864年(元治1年)	牢死	30	小者
45	南	勝平	山田千吉中間	1864年(元治1年)	牢死	19	小者
46	北	忠太郎	宍戸久之進小者	1864年(元治1年)	牢死	22	小者
47	南	清次	益田右衛門介中間	1864年(元治1年)	牢死	32	小者
48	北	吉蔵	粟屋亦助小者	1864年(元治1年)	牢死	20	小者