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竈門神社

出典:安藤希章著『神殿大観』(2011-) 最終更新:2023年12月5日 (火)

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竈門神社上宮

竈門神社(かまど・じんじゃ)は、福岡県太宰府市内山(筑前国御笠郡)の宝満山にある宝満山信仰の総本社。祭神は玉依姫命。相殿に神功皇后応神天皇を祀り、八幡信仰とゆかり深い。官社名神大社官幣小社別表神社。通称は宝満宮竈門社宝満大菩薩宝満山有智山寺の項目も参照。

目次

祭神

『宇佐託宣集』(1313)には755年の託宣として、八幡神は「竈門明神は吾姨」と述べたという。 『伊呂波字類聚抄』(平安時代末)には大分宮が筥崎宮に遷座したい旨を告げた921年の託宣で「竈門宮」を「我伯母」としている。 鎌倉時代末には宝満大菩薩と呼ばれた。 江戸時代の『和漢三才図会』(1712)や『筑前国続風土記』(1703)では「玉依姫」を祭神とし、神武天皇の母だとする。また相殿を神功皇后と八幡大神としており、現在の祭神もこれを踏襲している。 伴信友の『神名帳考証』(1813)では「宝満明神」は「玉依姫命」だとする。 『書言字考節用集』(1717)では神功皇后の妹の淀姫だとする説もある。

歴史

由緒

神社縁起では664年、大宰府の鬼門除けとして竈門山上に八百万神を祀ったのが始まりという。 673年2月10日に心蓮が登頂すると玉依姫命が示現し、社殿を建てた。

古代

1960年の調査で山頂祭祀遺跡から8世紀の奈良三彩や皇朝銭が出土しており、大宰府が祭祀を行っていたとみられる。 840年4月21日、従五位下から従五位上となる(『続日本後紀』) 同時に阿蘇神社と高良大社にも神階が授けられている。 この頃、大宰府管内で疫病が流行り、遣唐使船の事故も増えていた。 842年7月3日、朝廷は「祟」のため宗像大社、竈門神社、阿蘇神社に奉幣している。 838年、円仁が入唐の際に大山寺で竈門神などに祈願。 847年に帰国すると11月28日、大山寺で金剛般若経を転読し、竈門神などに使者を送り帛を奉った。

852年4月、入唐する円珍は博多浜で諸社の方角に向いて転読。竈門神社には4月7日に行った。

859年1月27日、全国の267社に神階が授けられ、竈門神社は従四位下となった(三代実録)。 879年6月7日、従四位上(三代実録)。 896年9月4日、正四位上(日本紀略)。894年遣唐使廃止で注目が弱まる。 竈門神社の支配を巡った延暦寺と石清水八幡宮の争論の後、1106年、正一位となる。

上宮・中宮・下宮の三宮があるが、一般的に下宮から順に成立していくと考えられている。 近代の文献では下宮を903年3月に建立したとあるが、もっと古いとみられる。 下宮周辺からは奈良時代の神宮寺跡の瓦が出土しており、下宮の成立も同時期の可能性がある。 社殿の存在を示す初出史料は、『石清水文書』に1085年9月5日に陰陽寮が「竈門社」の遷宮日時を同年12月17日と定めた文書とされる。 これは下宮の遷座祭とみられる。上宮も平安時代末期には存在した。1105年3月3日、竈門宮上宮が焼失(中右記)。 1112年4月、陰陽寮が竈門上宮の遷宮日時を勘申。 1130年12月、大宰府が竈門上宮の遷宮日時を報告。


1155年4月、天火で「竈宮」が焼失(台記)し、 1160年、竈門宮、大山、安楽寺が焼失(百錬抄)したとあるが上宮か下宮かは分からない。

803年、最澄は入唐のため遣唐使船で難波津を出発するが、難破して九州に漂着。 翌年9月の再出発までの間、多くの時間を竈門神社神宮寺の竈門山寺で過ごしたという。 扶桑略記には803年閏10月23日、薬師仏4体を造立したとある。 この薬師仏の1体が福岡市東光院にあるという。

藤原経衡は天喜年間、「竈門明神」に雨乞いのため水鏡を奉納した。

969年には筑前国の諸大社と同時に大宮司が置かれたらしい。 神人がいたことは分かるが詳細は分からない。

中世

1518年、上宮が炎上。 筑紫満門、1521年再建(北肥戦志) 1594年、小早川隆景が諸堂再興。

大宰府五条にあった頓宮に神輿が渡御していた。戦乱で途絶。

近世

宮司はほとんどの期間は座主が担っていたらしい。権宮司には子院住職が就いた。 1709年3月、下宮再興。 1855年、上宮再建。

藩主と座主の関係がこじれた時には太宰府天満宮を頼ることもあった。

近現代

明治5年11月、村社。この時から太宰府天満宮の管轄下に入ったとみられる。 明治28年9月30日、官幣小社に昇格(9/25とも、10/6とも)。 太宰府天満宮の強力な支援によるものだった。

明治11年、山上の本社が大破。11月に修復。 明治37年10月3日、上宮が焼失。大正1年に再建され10月23日に遷座祭。

境内

宝満山を参照。

組織

社務頭

  • 藤井高門()<>:最後の座主。周雅。明治5年の村社列格と共に離れたとみられる。

社掌

  • 吉田広成()<>:吉祥坊

歴代宮司

竈門神社歴代宮司
生没年 在職年 略歴
1 西高辻信厳 1846-1899 1895-1899 太宰府神社宮司。1895年(明治28年)10月14日兼務。1899年(明治32年)1月29日死去。(略歴は太宰府天満宮#組織を参照)
2 大橋鐐輔 生没年不詳 1901-1901 1901年(明治34年)3月1日、竈門神社宮司。同年10月21日、丹生川上神社宮司に転任。(略歴は丹生川上神社#組織を参照)
3 木庭保久 1845-1926 1901-1902 熊本出身。神風連の乱に加わる。1901年(明治34年)10月31日、竈門神社宮司。1902年(明治35年)10月11日、筥崎宮に転任。のち八代宮宮司。(略歴は筥崎宮#組織を参照)
4 西高辻信稚 1877-1952 1902-1903 太宰府神社宮司。1902年(明治35年)10月11日、竈門神社宮司を兼務。1903年(明治36年)3月11日退任。(略歴は太宰府天満宮#組織を参照)
5 本田豊 生没年不詳 1903-1912 1903年(明治36年)3月11日、竈門神社宮司。1912年(大正1年)10月22日、新田神社宮司に転任。神宮神部署高知支署長。(略歴は新田神社#組織を参照)
6 後藤周次郎 1876-? 1912-1920 静岡県出身。国学院大学師範部卒。1912年(大正1年)10月22日、竈門神社宮司。1920年(大正9年)11月19日、西寒多神社宮司に転任。多度大社宮司、井伊谷宮宮司を歴任。後藤周治郎。(略歴は井伊谷宮#組織を参照)
7 大久保千濤 1877-1943 1920-1926 高知県出身。1920年(大正9年)11月19日竈門神社宮司。1926年(昭和1年)10月1日、枚岡神社宮司に転任。(略歴は枚岡神社#組織を参照)
8 西高辻信任 1891-1937 1926-1937 西高辻信厳の子。西高辻信稚の弟。西高辻信貞の実父。1891年(明治24年)生。国学院大学卒。1916年(大正5年)竈門神社禰宜。1926年(昭和1年)10月1日、竈門神社宮司。1937年(昭和12年)10月9日、在職で死去。
9 中井藤一郎 ?-1947 1937-1944 奈良県出身。皇典講究所教習科卒。1937年(昭和12年)10月16日、竈門神社宮司。1944年(昭和19年)7月4日、熊野那智大社宮司に転任。のち丹生川上神社宮司。(略歴は丹生川上神社#組織を参照)
10 業合弘海 ?-1949 1944-1947 岡山県出身。豊原北島神社の社家。国学者業合大枝の曾孫。1921年(大正10年)神宮皇学館専科卒業。1924年(大正13年)日本大学文学部卒業。吉備津神社禰宜。豊原北島神社社司を兼務。1944年(昭和19年)7月4日、竈門神社宮司。1947年(昭和22年)3月2日、病気で宮司を辞任。1949年(昭和24年)6月17日死去。53歳。
11 西高辻信貞 1920-1987 1948-1952 太宰府天満宮宮司。西高辻信任の子。1948年(昭和23年)4月30日、竈門神社宮司を兼務。1952年(昭和27年)10月23日退任。のち再任。(略歴は太宰府天満宮#組織を参照)
12 荒川孝 1911-? 1952-1954 静岡県出身。1911年(明治44年)生。1937年(昭和12年)神宮皇学館本科卒。菅生石部神社主典。太宰府天満宮権禰宜。1952年(昭和27年)10月23日、竈門神社宮司。1954年(昭和29年)8月10日退任。
13 西高辻信貞 1920-1987 1954-1983 太宰府天満宮宮司。1954年(昭和29年)8月20日、竈門神社宮司に再任。1983年(昭和58年)11月1日退任。
14 西高辻信良 1953- 1983- 太宰府天満宮宮司。1983年(昭和58年)11月1日、竈門神社宮司を兼務。(略歴は太宰府天満宮#組織を参照)

画像

参考文献

  • 土岐昌訓 平成7「旧官国幣社と延喜式内社」『神社史の研究』

脚注

http://shinden.boo.jp/wiki/%E7%AB%88%E9%96%80%E7%A5%9E%E7%A4%BE」より作成

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