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古代エジプトの宗教

出典:安藤希章著『神殿大観』(2011-) 最終更新:2017年4月23日 (日)

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== 概要 ==
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古代エジプトの宗教。
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== 歴史 ==
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*先王朝時代(紀元前3150-紀元前3050)
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**紀元前3000年頃:ナルメルがエジプトを統一。
**紀元前3000年頃:ナルメルがエジプトを統一。
*初期王朝時代(紀元前3050-紀元前2686、第1~2王朝)
*初期王朝時代(紀元前3050-紀元前2686、第1~2王朝)
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**[[メンフィス]]を首都とする。
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**第2王朝時代:[[ヘリオポリス]]を中心とした[[ラー信仰]]が興隆。
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**[[ホルス信仰]]が王の守護神として興隆。[[セト信仰]]と対立。
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**下エジプトの神[[ホルス]]が王の守護神として興隆。上エジプトの[[セト信仰]]と対立。
*古王国時代(紀元前2686-紀元前2181、第3~6王朝)
*古王国時代(紀元前2686-紀元前2181、第3~6王朝)
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**第3王朝時代:ジェセル王がイムヘテプに[[サッカラ]]で初の[[サッカラのピラミッド|ピラミッド]](階段ピラミッド)を建立させる。
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**第5王朝時代:ラー信仰が最盛期。王の称号として「太陽神ラーの息子」が用いられ始める。
**第5王朝時代:ラー信仰が最盛期。王の称号として「太陽神ラーの息子」が用いられ始める。
*第1中間期(紀元前2181-紀元前2060、第7~10王朝)
*第1中間期(紀元前2181-紀元前2060、第7~10王朝)
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*中王国時代(紀元前2060-紀元前1782、第11~12王朝)
*中王国時代(紀元前2060-紀元前1782、第11~12王朝)
**第11王朝が初めて[[テーベ]]を首都とする。テーベの[[メンチュウ信仰]]が興隆。
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**第12王朝時代:[[イチタウイ]]が首都となる。アメンエムハムト1世が[[アメン]]を王朝の守護神と定める。
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**第12王朝時代:[[イチタウイ]]が首都となる。アメンエムハムト1世がテーベの土地神[[アメン]]を王朝の守護神と定める。以後、アメンが最高神として位置づけ直されていく。
*第2中間期(紀元前1782-紀元前1570、第12~17王朝)
*第2中間期(紀元前1782-紀元前1570、第12~17王朝)
**[[アヴァリス]]を首都とする、シリア人による第15・16王朝(ヒクソス王朝)が成立。[[セト]]を[[バアル]]と同一視して信仰する。
**[[アヴァリス]]を首都とする、シリア人による第15・16王朝(ヒクソス王朝)が成立。[[セト]]を[[バアル]]と同一視して信仰する。
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**ハトシェプスト女王が、エジプト神殿建築の最高傑作と言われる自らの[[ハトシェプスト女王葬祭殿|葬祭殿]]を創建。
**ハトシェプスト女王が、エジプト神殿建築の最高傑作と言われる自らの[[ハトシェプスト女王葬祭殿|葬祭殿]]を創建。
**アメンヘテプ3世が[[ルクソール神殿]]を大規模に造営した。
**アメンヘテプ3世が[[ルクソール神殿]]を大規模に造営した。
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**紀元前1360年頃、アクエンアテン王が従来の信仰を禁止弾圧。[[アテン信仰]]のみを国家宗教とし、首都[[アマルナ]]など各地に神殿を創建させた。ツタンカーメン王が古都メンフィスを首都として定め、従来の信仰を復興させる。
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**紀元前1360年頃、アクエンアテン王が従来の信仰を禁止し弾圧。[[アテン信仰]]のみを国家宗教とし、首都[[アマルナ]]など各地に神殿を創建させた。ツタンカーメン王が古都[[メンフィス]]を首都として定め、従来の信仰を復興させる。
**第19王朝時代:[[ベルラメセス]]を首都とする。ラメセス2世が[[アブシンベル神殿]]などを創建。
**第19王朝時代:[[ベルラメセス]]を首都とする。ラメセス2世が[[アブシンベル神殿]]などを創建。
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**第20王朝時代:カルナック神殿がテーベの支配権を握り、のち王朝とは別にアメン神権国家となる。
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**第20王朝時代:カルナック神殿がテーベの支配権を握り、のち王朝とは別に'''アメン神権国家'''となる。
*第3中間期(紀元前1069-紀元前525、第21~26王朝)
*第3中間期(紀元前1069-紀元前525、第21~26王朝)
**第21王朝は[[タニス]]を首都とする。
**第21王朝は[[タニス]]を首都とする。
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**第26王朝は[[サイス]]を首都とする
**第26王朝は[[サイス]]を首都とする
*末期王朝(紀元前525-紀元前332、第27~31王朝)
*末期王朝(紀元前525-紀元前332、第27~31王朝)
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**アケメネス朝ペルシャの支配下に入る(第27・31王朝)
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**アケメネス朝ペルシアの支配下に入る(第27・31王朝)
*末期王朝以降(紀元前332-紀元前30、プトレマイオス朝)
*末期王朝以降(紀元前332-紀元前30、プトレマイオス朝)
**ギリシアの[[アレキサンダー]]が占領。プトレマイオス朝。[[アレクサンドリア]]が首都となる。
**ギリシアの[[アレキサンダー]]が占領。プトレマイオス朝。[[アレクサンドリア]]が首都となる。
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**[[セラピス信仰]]が興隆。帝国を通じ、[[ローマ]]など、地中海世界に広がる。
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**[[古代ギリシアの宗教]]と習合した[[セラピス信仰]]が興隆。帝国を通じ、[[ローマ]]など、地中海世界に広がる。
**紀元前30年、ローマの属州となる。
**紀元前30年、ローマの属州となる。
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== 神々と信仰系譜 ==
== 神々と信仰系譜 ==
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===重要な神々===
*[[ラー]] 最高神の一柱。太陽神。
*[[ラー]] 最高神の一柱。太陽神。
*[[オシリス]] 最高神の一柱。冥府・死者の神。来世信仰。
*[[オシリス]] 最高神の一柱。冥府・死者の神。来世信仰。
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*[[ホルス]] 皇祖神。天空神。オシリスあるいはラーの子。
*[[ホルス]] 皇祖神。天空神。オシリスあるいはラーの子。
*[[アテン]] 唯一神。太陽神。
*[[アテン]] 唯一神。太陽神。
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*[[イシス]] オシリスの妻。ホルスの母。
*[[イシス]] オシリスの妻。ホルスの母。
*[[セト]] ホルスと王位をめぐって争う。
*[[セト]] ホルスと王位をめぐって争う。
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===その他の神々===
*[[トト]] 知恵の神。トキの頭を持つ。
*[[トト]] 知恵の神。トキの頭を持つ。
*[[セベク]] ワニの頭を持つ。農耕神。
*[[セベク]] ワニの頭を持つ。農耕神。
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== 人物 ==
== 人物 ==
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==神殿と聖地==
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==神殿・都市・聖地==
[[メンフィス]]、[[テーベ]](ルクソール)、[[アレクサンドリア]]が古代エジプトの三大都市とされる(近藤二郎氏)。
[[メンフィス]]、[[テーベ]](ルクソール)、[[アレクサンドリア]]が古代エジプトの三大都市とされる(近藤二郎氏)。
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====下エジプト(北部)====
====下エジプト(北部)====
*[[メンフィス]] 初期王国・古王国と新王国一時期の首都。古代での下エジプトの中心都市。
*[[メンフィス]] 初期王国・古王国と新王国一時期の首都。古代での下エジプトの中心都市。
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**[[メンフィスのプタハ神殿]]
**[[メンフィスのアテン神殿]]
**[[メンフィスのアテン神殿]]
**[[メンフィスのセラピス神殿]]
**[[メンフィスのセラピス神殿]]
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**[[メンフィスのプタハ神殿]]
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**[[メンフィスのハトホル神殿]]
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**[[メンフィスのアヌビス神殿]]
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**[[メンフィスのバステト神殿]]
**[[サッカラ]]
**[[サッカラ]]
***[[サッカラのセラピス神殿]]
***[[サッカラのセラピス神殿]]
***[[ニウセルラー王創建の太陽神殿]]
***[[ニウセルラー王創建の太陽神殿]]
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***[[ウセルカフ王創建の太陽神殿]]
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*[[ギザ]]
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***[[階段ピラミッド]]
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**[[ギザの第一ピラミッド]] クフ王の大ピラミッド
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***[[ペピ1世のピラミッド]]
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**[[ギザの第二ピラミッド]] カフラー王のピラミッド
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***[[メルエンラー1世のピラミッド]]
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**[[ギザの第三ピラミッド]] メンカウラー王のピラミッド
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***[[ホルエムヘブ墓]]
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*[[ダハシュール]]
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**[[ギザ]]
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**[[赤ピラミッド]]
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***[[ギザの第一ピラミッド]] クフ王の大ピラミッド
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**[[屈折ピラミッド]]
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***[[ギザの第二ピラミッド]] カフラー王のピラミッド
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***[[ギザの第三ピラミッド]] メンカウラー王のピラミッド
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**[[ダハシュール]]
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***[[赤ピラミッド]]
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***[[屈折ピラミッド]]
*[[マイドゥーム]]
*[[マイドゥーム]]
**[[崩壊ピラミッド]]
**[[崩壊ピラミッド]]
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*国際連合教育科学文化機関ウェブサイト、The Rescue of Nubian Monuments and Sites[http://whc.unesco.org/en/activities/173/](2015年1月確認)
*国際連合教育科学文化機関ウェブサイト、The Rescue of Nubian Monuments and Sites[http://whc.unesco.org/en/activities/173/](2015年1月確認)
*近藤二郎、2013『ゼロからわかる古代エジプト』学研
*近藤二郎、2013『ゼロからわかる古代エジプト』学研
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2017年4月23日 (日) 時点における最新版

目次

概要

古代オリエントの宗教

古代エジプトの宗教。

歴史

  • 先王朝時代(紀元前3150-紀元前3050)
    • 紀元前3000年頃:ナルメルがエジプトを統一。
  • 初期王朝時代(紀元前3050-紀元前2686、第1~2王朝)
    • 創造神プタハの聖地である下エジプトのメンフィスを首都とする。以後、中王国時代にテーベが首都となるまで中心都市となる。巡礼地としてはローマ帝国時代まで続く。
    • 第2王朝時代:ヘリオポリスを中心としたラー信仰が興隆。
    • 下エジプトの神ホルスが王の守護神として興隆。上エジプトのセト信仰と対立。
  • 古王国時代(紀元前2686-紀元前2181、第3~6王朝)
    • 第3王朝時代:ジェセル王がイムヘテプにサッカラで初のピラミッドを建立させる。
    • 第4王朝時代:ギザの三大ピラミッド建立。
    • 第5王朝時代:ラー信仰が最盛期。王の称号として「太陽神ラーの息子」が用いられ始める。
  • 第1中間期(紀元前2181-紀元前2060、第7~10王朝)
  • 中王国時代(紀元前2060-紀元前1782、第11~12王朝)
    • 第11王朝が初めてテーベを首都とする。テーベのメンチュウ信仰が興隆。
    • 第12王朝時代:イチタウイが首都となる。アメンエムハムト1世がテーベの土地神アメンを王朝の守護神と定める。以後、アメンが最高神として位置づけ直されていく。
  • 第2中間期(紀元前1782-紀元前1570、第12~17王朝)
    • アヴァリスを首都とする、シリア人による第15・16王朝(ヒクソス王朝)が成立。セトバアルと同一視して信仰する。
    • 第17王朝はテーベを首都とする。
  • 新王国時代(紀元前1570-紀元前1069、第18~20王朝)
    • 第18王朝時代:テーベを首都とし、国家神とされたアメンを祀るカルナック神殿が重視されて、歴代国王が造営を繰り返した。ヌビアを植民地とする。国王が王家の谷に葬られる。
    • ハトシェプスト女王が、エジプト神殿建築の最高傑作と言われる自らの葬祭殿を創建。
    • アメンヘテプ3世がルクソール神殿を大規模に造営した。
    • 紀元前1360年頃、アクエンアテン王が従来の信仰を禁止し弾圧。アテン信仰のみを国家宗教とし、首都アマルナなど各地に神殿を創建させた。ツタンカーメン王が古都メンフィスを首都として定め、従来の信仰を復興させる。
    • 第19王朝時代:ベルラメセスを首都とする。ラメセス2世がアブシンベル神殿などを創建。
    • 第20王朝時代:カルナック神殿がテーベの支配権を握り、のち王朝とは別にアメン神権国家となる。
  • 第3中間期(紀元前1069-紀元前525、第21~26王朝)
    • 第21王朝はタニスを首都とする。
    • 第25王朝時代:ヌビア人によるクシュ王朝が成立。
    • 第26王朝はサイスを首都とする
  • 末期王朝(紀元前525-紀元前332、第27~31王朝)
    • アケメネス朝ペルシアの支配下に入る(第27・31王朝)
  • 末期王朝以降(紀元前332-紀元前30、プトレマイオス朝)


神々と信仰系譜

重要な神々

  • ラー 最高神の一柱。太陽神。
  • オシリス 最高神の一柱。冥府・死者の神。来世信仰。
  • アメン 最高神の一柱。元はテーベの豊穣神。ラーと習合。
  • アトゥム 最高神の一柱。天地創造の神。ラーと習合。
  • プタハ 天地創造の神。職人の神。
  • ホルス 皇祖神。天空神。オシリスあるいはラーの子。
  • アテン 唯一神。太陽神。
  • イシス オシリスの妻。ホルスの母。
  • セト ホルスと王位をめぐって争う。

その他の神々

このほか、アポピス、アメミト、ケペリ、コンス、シュウ、セシャト、セルケト、タウレト、テフヌト、ヌン、ネフティス、ハピ、ベス、ベヌウ、マアト、メレトセゲルなどが信仰されていた。

国王など霊廟・陵墓

人物

神殿・都市・聖地

メンフィステーベ(ルクソール)、アレクサンドリアが古代エジプトの三大都市とされる(近藤二郎氏)。

エジプト地方

下エジプト(北部)

上エジプト(南部)

ヌビア地方

現在のエジプト共和国南部アスワン周辺からスーダン共和国にかけての地域。

下ヌビア(北部)


上ヌビア(南部)

その他の地中海地方

アスワンハイダム建設

アスワンハイダムの建設のため、多くの遺跡が水没したが、重要な遺跡の一部は国際協力により移設が行われた。

現存

  • カスルイブリーム神殿は山の頂上にあったことから移築工事はされず、現在はナセル湖に浮かぶ島のようになっている。

水没

そのほか、時代を限定せず、多くの遺跡が水没したものと思われる。

移築

寄贈

  • デボ神殿はスペインに寄贈され、マドリードの公園に移築展示。
  • タファ神殿はオランダに寄贈され、ライデンの国立古代博物館に移築展示。
  • デンドゥール神殿はアメリカに寄贈され、ニューヨークのメトロポリタン美術館に移築展示。
  • エレシヤ神殿はイタリアに寄贈され、トリノのエジプト博物館に移築展示。
  • カラブシャ神殿の門の一つが、ドイツに寄贈され、ベルリンのエジプト博物館に移築展示。
  • 移築事業にもっとも貢献したフランスは、例外的にヌビア遺跡とは関わりのない、カルナック神殿から出土したアメンホテプ4世の胸像を持ち帰り、ルーブル美術館に展示。

参考文献

  • 関廣尚世、2010「スーダン共和国におけるヌビア遺跡群の現状と文化財保護における課題」[1]
  • 河野靖、1992「文化財保存のための国際協力(そのVII)」[2]
  • 国際連合教育科学文化機関ウェブサイト、The Rescue of Nubian Monuments and Sites[3](2015年1月確認)
  • 近藤二郎、2013『ゼロからわかる古代エジプト』学研
http://shinden.boo.jp/wiki/%E5%8F%A4%E4%BB%A3%E3%82%A8%E3%82%B8%E3%83%97%E3%83%88%E3%81%AE%E5%AE%97%E6%95%99」より作成

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