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根源の社
出典:安藤希章著『神殿大観』(2011-)
概要
根源の社(こんげん の やしろ)とは、松下幸之助が創建した、「宇宙の根源」を祀る神社型の宗教施設である。
松下幸之助(1894年(明治27年)-1989年(平成1年))は、独自の思想から神道、仏教、キリスト教の各宗教を信奉し、その実践を重視した。神社神道においては、伊勢神宮をはじめ、各神社に多大な寄付や寄進を寄せて、企業のアピールをするとともに、敬神の念を表した。また戦争で計画が頓挫した神道古典の叢書『神道大系』の編纂事業を継承し、170巻の刊行を見た。『神道大系』はただその編纂には飽きたらず、1冊1000円程度の普及版の刊行をも目指していたが、これは実現しなかった。
このような活動は松下の独自の思想に支えられていた。松下幸之助は、製品製造による物質的な繁栄を目指すとともに、精神的な豊かさの追求も重視していたのであった。これがPHP研究である。その理念は「物心ともに豊かな真の繁栄を実現していくことによって、人びとの上に真の平和と幸福をもたらそう」とすることであるという(PHP研究所ウェブサイトより)。根源の社はこのPHP研究と関わりがある。
根源の社は、真々庵、PHP本社、、松下電器本社(現・パナソニック本社)創業の森の三箇所に祀られた。
最初に祀られたのは松下の別邸真々庵だった(現在はパナソニックの迎賓館)。1961年(昭和36年)、社長から退いて会長になった松下幸之助は小川治兵衛作の庭園を購入して茶室などを建ててPHP研究の拠点とした。その翌年に真々庵の庭園の片隅に根源の社を創建した。その後、1967年(昭和42年)に京都駅前にPHP本社が設立され、そちらに拠点を遷したときも、本社ビル内に根源の社が祀られた。さらに1981年(昭和56年)、創業60周年記念に松下電器本社に創業の森というエリアが設置された際にも、そこに創建された。
ここに祀られる根源とは、次のような考えに基づくものだったという。「宇宙根源の力は、万物を存在せしめ、それらが、生成発展する源泉となるもので、その力は、自然の理法として、われわれお互いの胎内にも脈々として働き、一木一草のなかにまで、いきいきとあふれている。この偉大な根源の力が自然の理法を通じて、万物に生成発展の働きをしている。」というものであった。
松下は真々庵に訪れるたびに、まずこの根源の社に参拝して、静かに手を合わせていたという。あるいは社前に円座を敷き、座禅をして瞑想にふけることもあったという。何を祈っているのかという質問に対して、いま自分がここにいるという根源への感謝と、自分の行動が自然の理に従っているのかどうかという反省をしているんだと答えている。
ちなみに松下幸之助は、椿大神社末社の松下社に祀られている。
参考文献
- 坂本慎一「松下幸之助とPHP運動」渡邊直樹編2011『宗教と現代がわかる本2011』平凡社
- 谷口全平2007『松下幸之助運をひらく言葉』
- PHP総合研究所研究本部1999『松下幸之助ハンドブック』