江戸・真福寺

出典：安藤希章著『神殿大観』（2011-）

2024年4月14日 (日) 時点における版

真福寺（しんぷくじ）は、東京都港区愛宕にある真言宗寺院。本尊は薬師如来。真言宗智山派別院。近世は、弥勒寺・円福寺・根生院（当初は護持院）とともに真言宗新義派の江戸触頭寺院（江戸四カ寺）の一つ。大覚寺門跡の院室兼帯寺院として密持院の号を持った。法流の上では醍醐寺三宝院末だった。明治に真言宗大教院が置かれて以降、宗派の事務所として機能し、東京での真言宗各派の会合の場所ともなり、合同真言宗の宗務所も置かれた。愛宕真福寺。愛宕下薬師堂。宝光院と号す。山号は摩尼珠山。（参考：同名寺院真福寺）

歴史

1900年(明治33年)頃

説明に「真福寺大師堂」とある（1916『大日本寺院総覧』）

• 1591年(天正19年)：青山忠成、下総国匝瑳郡谷辺村の真福寺照海を招いて鉄砲洲に草庵を営む。白魚河岸の真福寺橋があったあたりという。
• 1605年(慶長10年)：現在地に移転。
• 1610年(慶長15年)：触頭を命じられたという[1]。
• 1613年(慶長18年)6月5日：義演、真福寺で弥勒寺宥鑁ら10人に印可を授ける。[https://dl.ndl.go.jp/pid/1917798/1/297
• 1662年(寛文2年)：大覚寺門跡の院室兼帯寺院「密持院」となる[2]。
• 1692年(元禄5年)6月10日：将軍徳川綱吉、100石寄進[3]。
• 1717年(享保2年)12月28日：真福寺あたりから出火し火災[4]
• 1727年(享保12年)：類焼[5]
• 1850年(嘉永3年)2月5日：江戸大火。真福寺や円福寺など類焼。[6]
• 1858年(安政5年)3月：オランダ使節クルチウスが真福寺に滞在[7]。西応寺に公使館を設置するまで。
• 1858年(安政5年)7月：ロシア使節プチャーチンが真福寺に滞在[8]。
• 1858年(安政5年)8月：フランス使節グローが真福寺に滞在[9]。
• 1872年(明治5年)4月25日：教部省会議への方針を決めるために智積院・長谷寺の両派が真福寺教性院で会合を開く[10]。
• 1875年(明治8年)4月：新義古義合同の真言宗大教院を真福寺に設置。[11]
• 1879年(明治12年)9月：醍醐寺出張所を真福寺内に設置[12]。
• 1880年(明治13年)1月15日：真言宗大教院を法務所と改称[13]
• 1891年(明治24年)3月13日：新義派末派会議を開催。[14]
• 1900年(明治33年)8月12日：智山派事務所を真福寺内に設置[15]。
• 1923年(大正12年)9月1日：関東大震災で焼失
• 1931年(昭和6年)6月24日：再建[16]。「智積院東京別院」と称するようになったのはこの頃からとみられる。
• 1941年(昭和16年)3月31日：智山派解散。翌日、合同真言宗設立。
• 某年：合同真言宗の宗務所を真福寺内に設置。
• 1946年(昭和21年)3月1日：戦後、合同真言宗の解体で真言宗智山派が再独立。
• 1953年(昭和28年)1月1日：宗務所が東京真福寺から京都智積院に移転。
• 1993年(平成5年)4月：真福寺ビル起工式[17]
• 1995年(平成7年)6月30日：「真福寺・愛宕東洋ビル」として再建。落慶法要[18][19]。

伽藍

• 本堂：本尊は薬師如来。浅野長政が自らの等身を照海に彫らせたものという。廃絶。
• 地蔵堂：廃絶か。愛宕円福寺旧本尊の勝軍地蔵を祀っていた[20]。
• 弁天社：旧子院玉蔵院の本尊。廃絶。

子院

• 長久院：本尊は観音菩薩。
• 真養院：本尊は庚申。真善院とも。
• 玉蔵院：本尊は弁財天。寛政年間廃絶。
• 薬師寺：
• 鏡照院：教性院も同一か。現存か。
• 満蔵院：
• 普賢院：円福寺子院となる[21]。
• 金剛院：円福寺子院となる[22]。

組織

歴代住職

• 1照海（）<>：1601年(慶長6年)上人号[23]。1616年(元和2年)2月13日死去[24]。
• 2照誉（）<>：
• 3日宝（）<>：
• 4恭誉（）<>：
• 5隆鑁（）<>：
• 6宥鑁（1624-1702）<>：智積院9世。1683年(天和3年)真福寺住職[25]。1693年(元禄6年)智積院化主[26]。
• 快孝（）<>：1676年(延宝4年)総州西光寺住職[27]。1712年(正徳2年)7月、真福寺住職[28]。
• 7性遍（）<>：
• 8運寿（）<>：真壁安幹の子。秋田一乗院に住す。春山。義堂。1712年(正徳2年)2月26日死去[29]。
• 9実鑁（）<>：1714年(正徳4年)1月5日死去[30]。60歳。下野国佐野出身。覚春。智山学匠。
• 10快存（1647-1724）<>：智積院13世。
• 11弁海（）<>：宝仙寺28世。宝仙寺を経て1715年(正徳5年)7月、真福寺住職。[31]
• 12実貫（1666-1720）<>：仙台龍宝寺に招かれる。
• 13慈海（）<>：
• 14亮範（1670-1739）<>：智積院15世。越前国新保浦出身。蟹満寺、六波羅蜜寺を経て1721年(享保6年)10月、真福寺住職[32]。岳泉。
• 15日恵（）<>：
• 16定恵（）<>：
• 17覚純（）<>：
• 18宥範（）<>：
• 19範海（）<>：
• 20英範（1730-1804）<>：智積院27世。
• 21等空（?-1777）<>：智積院21世。紀伊国出身。1764年(明和1年)8月22日、真福寺住職[33]。1766年(明和3年)5月26日、智積院化主。[34]
• 22隆雄（）<>：下総国出身。智山学匠。1766年(明和3年)7月、真福寺住職[35]。覚山。
• 23動潮（1709-1795）<>：智積院22世。1769年(明和6年)8月、真福寺住職[36]。1773年(安永2年)智積院化主。通紹。
• 24鑁啓（1718-1794）<>：智積院23世。
• 25本秀（）<>：
• 26純雅（）<>：越前国三国出身。1768年(明和5年)佐渡蓮華峰寺住職[37]。1781年(天明1年)秋、真福寺住職[38]。在職10年。以思。
• 27英範（1730-1804）<>：智積院27世。近江国出身。1791年(寛政3年)6月、真福寺住職[39]。本堂再建。宝州。1803年(享和3年)11月20日智積院化主。[40]
• 28観豪（1747-1813）<>：智積院29世。1805年(文化2年)2月10日、真福寺住職。[41]
• 29亮海（1750-1828）<>：智積院31世。
• 30海応（1769-1833）<>：智積院32世。六波羅蜜寺を経て1810年(文化7年)6月、真福寺住職[42]。1824年(文政7年)6月、真福寺に再任か[43]。1828年(文政11年)6月、智積院化主。[44]。
• 31弘賢（）<>：
• 32陽敞（）<>：
• 33範恵（1788-1850）<>：智積院36世。山城国相楽郡加茂村出身。1834年(天保5年)性海寺住職[45]。1835年(天保6年)真福寺住職[46]。1846年(弘化3年)冬、智積院化主[47]。快順。
• 34兆導（）<>：
• 35隆栄（1809-1867）<>：智積院39世。1856年(安政3年)真福寺住職。[48]。1862年(文久2年)閏8月29日智積院化主。[49]．龍謙房。
• 36契理（）<>：

• 富田学純『新義真言宗史』[50]
• 志賀照林から宗務長が兼務する。

資料

• 東京市史稿[52]
• 江戸東京寺社名集覧[53]
• 『新修港区史』「外国公館が置かれた寺院等」[54]
• 『港区史』「新義真言宗の江戸四箇寺」[55]
• 宇高良哲1977「新義真言宗触頭江戸四箇寺成立年次考」[56]