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古代メソポタミアの宗教
出典:安藤希章著『神殿大観』(2011-)
2018年2月5日 (月) 時点におけるWikiSysopKARASUYAMA (トーク | 投稿記録)による版
目次 |
概要
古代メソポタミアの宗教。
歴史
王朝の変遷に伴い、アン、エンリル、マルドゥク、アッシュルと最高神が交代していった。
シュメール時代(BC9000-)
バビロニア時代(BC2004-BC1595)
ハンムラビ王 マルドゥク信仰が盛んになる
ヒッタイト時代(BC1595-BC1200)
アッシリア時代(BC1200-BC609)
アッシュル信仰が盛んになる
神々と信仰系譜
- アン(アヌ):ウルクの神。天空の神。エンリルの父。
- エンリル:ニップルの神。神々の王。空気の神。
- エンキ(エア):エリドゥの神。エンリルの補佐役。水の神
- マルドゥク:バビロンの主神。絶対神となる。
- アッシュル:アッシュルの神。
- ナブー:マルドゥクの子。書記。
- タシュメートゥ:ナブーの妃。
- ザルパニートゥ:マルドゥクの妃。
- イナンナ(イシュタル):ウルクの女神。天上界の遊女。金星の神。戦いの神。
- ウトゥ(シャマシュ):太陽神。ハンムラピ法典を授けたとされる。
- ナンナ(シーン):月神
- イシュクル(アダド):天候神
- バアル
国王の霊廟・陵墓
人物
神殿と聖地
名称 | 現在の国 | 所在地 | 信仰系譜 | 備考 |
---|---|---|---|---|
白神殿 | イラク領 | ウルク | アン | アンのジッグラト。クラバ神殿。ウルクのジッグラト。紀元前3000年の遺構が確認されており、メソポタミア最古の神殿遺構。陶器を用いたモザイクの幾何学模様の柱があり「モザイク神殿」とも呼ばれる。 |
ニップルのエンリル神殿 | イラク領 | ニップル | エンリル | エンリル信仰の総本社。エクル神殿ともいう。(「Ancient Mesopotamian Gods and Goddesses」より) |
バビロンのエンリル神殿 | イラク領 | バビロン | エンリル | (「Ancient Mesopotamian Gods and Goddesses」より) |
アッシュルのエンリル神殿 | イラク領 | アッシュル | エンリル | シャムシ・アダド1世が再建。(「Ancient Mesopotamian Gods and Goddesses」より) |
デュルクリガルズのエンリル神殿 | イラク領 | デュルクリガルズ | エンリル | (「Ancient Mesopotamian Gods and Goddesses」より) |
エリドゥのエンキ神殿 | イラク領 | エリドゥ | エンキ | エエングラ神殿、エアブズ神殿ともいう。(「Ancient Mesopotamian Gods and Goddesses」より) |
バビロンのマルドゥク神殿 | イラク領 | バビロン | マルドゥク | バベルの塔のモデルと言われている。エ・テメン・アン・キ。エサギラ神殿ともいうが、イシュタル、エア、マダーヌ、グラの神殿を含めた神殿群を指すこともある。 |
ニネヴェのマルドゥク神殿 | イラク領 | ニネヴェ | マルドゥク | 不詳。 |
アッシュル神殿 | イラク領 | アッシュル | アッシュル | |
パルミラのバアル神殿 | シリア領 | パルミラ | バアル | ベル神殿。 |
パルミラのバアルシャミン神殿 | シリア領 | パルミラ | バアル | バアル神が派生して、ベルとバアルシャミンに別れた。 |
ウガリットのバアル神殿 | シリア領 | ウガリット | バアル | 現在のラス・シャムラがウガリットとされる。境内から出土したバアル神の雷を持つ線刻碑が有名。またウガリット遺跡から出土した銅像も有名。 |
エマルのバアル神殿 | シリア領 | エマル | バアル | 青銅器時代後期の神殿跡が見つかっている。 |
カルタゴのバアル神殿 | チュニジア領 | カルタゴ | バアル | バールゼフォンを祀る? |
バールハモンとタニトの神殿 | チュニジア領 | カルタゴ | バアル | バールハモンはバアルから派生した神でカルタゴの守護神とされ、またモレクと同一視された。タニトはその妃神。 |
サマリアのバアル神殿 | パレスチナ領 | サマリア | バアル | 北イスラエル王国のアハブ王が創建。 |
エシュムン神殿 | レバノン領 | シドン | バアル | 「シドンのバアル」ともいわれるエシュムンを祀る(Eerdmans Dictionary of the Bible)。 |
ドゥラエウロポスのバアル神殿 | シリア領 | ドゥラエウロポス | バアル | 街の西北にフレスコ画の壁画がある神殿跡が見つかっている |
バールベックのバアル神殿 | レバノン領 | バールベック | バアル | のちユピテルにとって変わられた。 |
ベトペオル神殿 | ヨルダン領 | ペオル山 | バアル | 「ベトペオル」つまり「ペオルのバアル」を祀る。聖書に登場。ペオル山はモアブ近郊にあった |
ヘルモン山のバアル祭壇 | レバノン領 | ヘルモン山 | バアル | 「ヘルモン山のバアル」を祀る。聖書に登場。 |
エジダ神殿 | シリア領 | ボルシッパ | ナブー | 中心的な神殿か。 |
パルミラのナブー神殿 | シリア領 | パルミラ | ナブー | 跡が残る |
ドゥルシャルキンのナブー神殿 | イラク領 | ドゥル・シャルキン | ナブー | |
ニネヴェのナブー神殿 | イラク領 | ニネヴェ | ナブー | 共に図書館があった |
ニムルドのナブー神殿 | イラク領 | ニムルド | ナブー | 大英博物館に神像が伝わる。ニムルド(カルフ) |
ウルクのイナンナ神殿 | イラク領 | ウルク | イナンナ(イシュタル) | イナンナ信仰の総本社。エアンナ神殿ともいう。イナンナはウルクの都市神でもある。 |
バビロンのイシュタル神殿 | イラク領 | バビロン | イナンナ(イシュタル) | エトゥルカランマ(Eturkalamma)と呼ばれた。マルドゥク神殿と共にエリドゥ地区のエサギラ神殿複合体を構成する。バビロンにはまた別にイシュタル門という名の門があった。 |
アッカドのイシュタル神殿 | イラク領 | アッカド | イナンナ(イシュタル) | アッカド帝国の首都アッカドは、バグダッドとサマラの間のあたりにあったが正確な位置は不明。 |
アッシュルのイシュタル神殿 | イラク領 | アッシュル | イナンナ(イシュタル) | 前期青銅器時代の遺構が発見されている(ウィキペディア英語版)。 |
アルベラのイシュタル神殿 | イラク領 | アルベラ | イナンナ(イシュタル) | 不詳。「アルベラのイシュタル」を祀る。アルベラはイシュタル信仰の拠点の一つだった。 |
エブラのイシュタル神殿 | シリア領 | エブラ | イナンナ(イシュタル) | 丘の頂上にある。大量の粘土板が出土したことで知られる。 |
キティのイナンナ神殿 | イラク領 | キティ | イナンナ(イシュタル) | イナンナ(イシュタル)・キティトゥム神殿。キティは現在のイシュチャリ(Ishchali)とされ、紀元前2000年頃の神殿遺構が残るが、キティではなくネレブトム(Nerebtum)とする説もある |
ニネヴェのイシュタル神殿 | イラク領 | ニネヴェ | イナンナ(イシュタル) | 「ニネヴェのイシュタル」を祀る。マニシュトゥシュ王が紀元前2260年に再建。 |
マリのイシュタル神殿 | シリア領 | マリ | イナンナ(イシュタル) | 「エビフ・イルの像」が発掘されたことで知られる。 |
シッパルのシャマシュ神殿 | イラク領 | シッパル | シャマシュ | シャマシュ信仰の中心的神殿 |
ラルサのシャマシュ神殿 | イラク領 | ラルサ | シャマシュ | シャマシュ信仰の中心的神殿 |
アッシュルのシャマシュ神殿 | イラク領 | アッシュル | シャマシュ | 紀元前15世紀 |
ハトラのシャマシュ神殿 | イラク領 | ハトラ | シャマシュ | |
マリのシャマシュ神殿 | シリア領 | マリ | シャマシュ | |
ウルのナンナ神殿 | イラク領 | ウル | ナンナ(シン) | ウルの主神殿。高さ30m。ウルのジッグラト。エ・テメン・ニグル。 |
シン神殿 | トルコ領 | ハラン | ナンナ(シン) | |
スーサのインシュシナク神殿 | トルコ領 | スーサ | インシュシナク | 彫刻のある壁が残る |
チョガザンビールのインシュシナク神殿 | イラン領 | チョガザンビール | インシュシナク | 跡が残る |
キシュのザババとイシュタルの神殿 | イラク領 | キシュ | ザババ(ニヌルタ) | ザババの総本社。ザババとイシュタルを祀る。ハンムラビ王が即位35年に修復。エメテウルサグ。 |
バビロンのニヌルタ神殿 | イラク領 | バビロン | ザババ(ニヌルタ) | (Letters from Assyrian Scholars to the Kings Esarhaddon and Ashurbanipal ) |
エニンヌ神殿 | イラク領 | ラガシュ | ザババ(ニヌルタ) | 祭神は軍神ニンギルス |
アシュドッドのダゴン神殿 | イスラエル領 | アシュドッド | ダゴン | 聖書に登場。(ウィキペディア英語版) |
ウガリットのダゴン神殿 | シリア領 | ウガリット | ダゴン | (ウィキペディア英語版) |
エブラのダゴン神殿 | シリア領 | エブラ | ダゴン | エブラの最高神であった(ウィキペディア英語版) |
ガザのダゴン神殿 | パレスチナ領 | ガザ | ダゴン | 聖書に登場。(ウィキペディア英語版) |
テルカのダゴン神殿 | シリア領 | テルカ | ダゴン | 紀元前3000年紀に成立した代表的な聖地。テルカはマリ近郊の都市。前2000年紀には巡礼地となり、周辺の王国の崇敬を得る。エキシガ神殿(ekisiga)。(The God Dagan in Bronze Age Syria) |
トゥトゥルのダゴン神殿 | シリア領 | トゥトゥル | ダゴン | 紀元前3000年紀に成立した代表的な聖地。エブラ文書によると、妃はトゥトゥルの神サラス。(The God Dagan in Bronze Age Syria) |
ベトダゴンのダゴン神殿 | イスラエル領 | ベトダゴン | ダゴン | ベトダゴンはアッコ近郊の街。聖書に登場。(ウィキペディア英語版) |
マリのダゴン神殿 | シリア領 | マリ | ダゴン | 通称ライオン神殿。 |
バビロンのグラ神殿 | イラク領 | バビロン | その他 | |
パルミラのアラート神殿 | シリア領 | パルミラ | その他 | アラートはアッラーの女性形 |
アインダラ神殿 | シリア領 | アインダラ | その他 | 祭神はイシュタルともアスタルトともハアドともいう。アレッポ近郊の遺跡。アインダーラ、アインダラーとも。入り口には足跡を刻んだ石がある。聖書のソロモンの神殿との類似性が指摘されている。 |
アクラブのシャラ神殿 | シリア領 | アクラブ | その他 | |
イシンのグラ神殿 | イラク領 | イシン | その他 | グラはニンイシンナとも。 |
ウンマのシャラ神殿 | イラク領 | ウンマ | その他 | エマフ神殿。(「ウル第三王朝時代のウンマにおける神殿への奉納」) |
エキシル神殿 | イラク領 | エシュヌンナ | その他 | 祭神はニンアズ |
メスラム神殿 | イラク領 | クタ | その他 | 祭神はネルガル。 |
テペガウラ神殿 | イラク領 | テペガウラ | その他 | 先史時代の遺跡。神殿跡がみつかっている。 |
テルカのニンカラク神殿 | シリア領 | テルカ | その他 | |
眼の神殿 | シリア領 | テルブラク | その他 | 多く出土したねじまきのようなオブジェの穴を眼に見立てて眼の神殿と呼ばれる」 |
ドゥラエウロポスのアタルガティス神殿 | シリア領 | ドゥラエウロポス | その他 | |
ニムルドのニヌルタ神殿 | イラク領 | ニムルド | その他 | アッシュールナツィルパル2世が建設 |
ヒエラポリスのアタルガティス神殿 | シリア領 | ヒエラポリス | その他 | |
ウル王墓 | イラク領 | ウル | 陵墓 |
都市
- 大洪水前の五大都市
- エリドゥ:エリドゥのエンキ神殿
- バドティビラ:ルーラル神殿があった。元はタンムーズ神殿であった。
- ララク:ラルサとして知られる。ラルサのシャマシュ神殿
- シッパル:シッパルのシャマシュ神殿(エバッバラ神殿)
- シュルッパク:テルファラ遺跡。ニンニル
拾遺
参考文献
- 松島英子、平成13年『メソポタミアの神像』角川叢書
ほか