良忍旧跡

出典：安藤希章著『神殿大観』（2011-）

良忍（りょうにん）（1072-1132）は、平安時代の天台宗の僧侶。秦氏。大原声明の開祖で、融通念仏宗の開祖とされる。青年期には良仁と称した。聖応大師(聖應大師)、光静房、光乗房。

年表

生涯

• 1072年(延久4年)：尾張国知多郡富田荘に誕生。父は秦道武。母は熱田神宮の「頭大宮司」の娘という。
• 1083年(永保3年)：比叡山に入る。東塔檀那院の良賀に師事し、良仁と称する。比叡山東塔の常行堂の堂僧だった。密教を禅仁・永意に、円頓戒を禅仁と観勢に学んだ。
• 1094年(嘉保1年)：比叡山を降りた良忍は大原別所に入る。勝林院の永縁、寛誓、尋宴、胆西に声明を習い、天台声明を大成した。
• 1098年(承徳2年)：『讃阿弥陀仏偈』手沢本に「良忍」と記す。
• 1109年(天仁2年)：良忍、来迎院と浄蓮華院を創立した。
• 1117年(永久5年)：良忍、融通念仏を感得。阿弥陀如来から「一人一切人、一切人一人、一行一切行、一切行一行、是名他力往生、十界一念、融通念仏、億百万遍、功徳円満」の偈を授かった（融通念仏縁起）。名帳を持ち、摂津、河内、紀伊を巡遊。
• 1121年(保安2年)2月29日：『三観義私記抄』を記す。
• 1125年(天治2年)：鞍馬寺に参籠して毘沙門天から融通念仏結衆守護の霊告を受けた。鞍馬寺再建の勧進の一環とみられる。
• 1127年(大治2年)：大念仏寺を創建。
• 1132年(長承1年)2月1日：良忍、来迎院で死去。

死後

• 久安年間（1145-1150）：「融通念仏」の語の初出。
• 1773年(安永2年)：桃園天皇から聖応大師号を下賜される。

一覧

• 宝珠寺：愛知県東海市富木島町。良忍の生誕地にある。良忍の父の藤原道武が創建したという。
• 正法塚：愛知県東海市富木島町。藤原道武らの墓碑。
• 比叡山東塔 常行堂
• 来迎院
• 来迎院 良忍墓
• 大原・浄蓮華院
• 寂光院
• 四天王寺
• 鞍馬寺
• 杭全神社
• 大念仏寺
• 叡福寺墓
• 勝手神社
• 大原・勝手神社

資料

著書

• 『三観義私記抄』：1121年。覚超『三観義私記』の抄出。

伝記

• 『後拾遺往生伝』「良仁伝」：三善為康著。1137-1139年頃成立。『東海市史』[1]
• 『三外往生記』「良忍上人伝」：寂蓮著。1139年(保延5年)以前成立。久安年間成立とも。「融通念仏」の語の初出。『東海市史』[2]
• 『古今著聞集』「良忍伝」：1254年。『東海市史』[3]
• 『融通念仏縁起』：1314年。『東海市史』[4]
• 『声明源流記』：凝然著。1321年(元亨1年)以前成立。『東海市史』[5]
• 『扶桑寄帰往生伝』「良忍」：『東海市史』[6]
• 『元亨釈書』「良忍」：『東海市史』[7]
• 『元亨釈書』「声明」：『東海市史』[8]
• 『本朝高僧伝』「城州来迎寺沙門良忍伝」：『東海市史』[9]

文献

• 鈴木暢幸1903『融通大念仏宗略史』[10]
• 松岡良友1904『仏教上に於ける良忍上人・聖応大師史的概観』[11]
• 山口光円1920「叡山の良忍上人が融通念仏を唱ふ」『叡山宗教』1-2
• 大山公淳1930『声明の歴史及び音律』「良忍上人及び門下」[12]
• 岩橋小弥太1941「聖応大師伝資料の一、二に就いて」[13]
• 竹岡芳雄1941「良忍上人と四天王寺」
• 須藤隆仙1957「良忍上人と立信上人」[14]
• 西口順子1959「院政期における別所浄土教の考察ー良忍上人伝をめぐって」『史窓』17
• 五来重1961「一遍上人と融通念仏」[15]
• 浜田全真1971「良忍上人と鞍馬寺」[16]
• 融通念仏宗教学研究所編1981『良忍上人の研究』：佐藤哲英監修
• 山崎欣弥1981「書評『良忍上人の研究』」[17]
• 佐藤哲英・横田兼章1981「良忍の融通念仏とその思想背景」[18]
• 小島惠昭1983「「念仏上人」円頓戒相承について」[19]
• 1990『東海市史通史編』「良忍」[20]
• 戸田孝重1994「良忍の総合的研究(一)」[21]
• 戸田孝重2009「『融通念仏縁起』と融通念佛宗」[22]
• 愛宕邦康1995「『遊心安楽道』来迎院本の包紙」[23]：良忍手沢本について。
• 田中夕子2015「念仏聖信仰の一考察」[24]：伝記の展開を考察。
• 金子彰2015「来迎院如来蔵『讃阿弥陀仏偈』の本文と訓点―良忍手沢本・教行信証・円空本模写本・南條本の比較を通して」[25]