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文殊信仰
出典:安藤希章著『神殿大観』(2011-) 最終更新:2017年12月15日 (金)
文殊信仰 |
目次 |
概要
文殊菩薩(もんじゅ・ぼさつ)は、大乗仏教における知恵と戒律を司り、また貧者救済を象徴する仏尊。清涼山に住むとされる。『華厳経』『法華経』『維摩経』などに登場。山門、経蔵、食堂、僧堂の本尊として祀られる。中国五台山が代表的な聖地。明王形になったのが、大威徳明王(ヤマーンタカ)という。普賢菩薩とともに釈迦の眷属として祀られることも多い。胎蔵曼荼羅では中台八葉院の西南に描かれる他、文殊院の主尊である。金剛界曼荼羅では、金剛利菩薩が同体とされる。マンジュシュリー(Manjusri)、文殊師利菩薩、曼殊室利菩薩、妙吉祥菩薩、妙音菩薩ともいう。また前世は妙光菩薩という。
歴史
インド
あまりに多くの経典に登場することから大乗仏教時代の実在の人物とする考えもある。信仰の成立は紀元1世紀から2世紀ごろとされ、菩薩信仰の発達と軌を一にする。『文殊師利般涅槃経』には生涯が語られている。
中国
五台山が聖地として信仰を集める。
日本
日本では、『維摩経』に付随して知られていたが、本格的な信仰は平安時代からで、最澄が延暦寺本堂に接して文殊堂を建立。また不空に真似て、食堂に賓頭盧に代わって文殊を安置することを提案し、没後に実現された。その弟子の円仁は、入唐して五台山を巡礼。延暦寺に文殊楼を建立。五台山の霊石を壇の五方に埋めたという。また文殊八字法を初めて伝えた。
戒律復興を目指した叡尊、忍性が信仰し、貧者救済の文殊供養をたびたび開いた。
信仰
経典
- 『華厳経』:善財童子に導き
- 『法華経』:冒頭で弥勒菩薩と問答
- 『維摩経』:維摩居士と問答
- 『文殊師利般涅槃経』
造形
絵画
維摩経変相図:『維摩経』で維摩居士と問答した場面を描いた図
変化
- 騎獅文殊:獅子に乗る文殊。
- 文殊五尊:優填王、仏陀波利三蔵、善財童子、大聖老人を眷属として従える。「五台山文殊」とも。
- 渡海文殊:海を渡る文殊五尊。日本に来る様子を表す説もあるが、中国にも原画があったとも言われる。
- 稚児文殊
- 僧形文殊:文殊菩薩は戒律の師表として理想の僧侶としても信仰されるため、僧侶の形で表すこともある。食堂本尊などに見られる。貧者救済の文殊会の本尊としても祀られる。
- 一字文殊:頭にある髻の数がひとつ。「増益」。
- 五字文殊:「息災」
- 六字文殊:「滅罪」や「調伏」
- 八字文殊:「息災」や「調伏」
眷属
- 獅子:獅子に乗る像が多い。
- 優填王:優填王と文殊菩薩の関係は不詳。
- 仏陀波利三蔵:五台山を巡礼したインド僧。五台山に行く途中で文殊菩薩の化身である大聖老人に出会う。
- 善財童子:『華厳経』で文殊菩薩の教えを受けて旅立つ。
- 大聖老人:五台山に向かう仏陀波利の前に姿を表した文殊菩薩の化身。
- 婆藪仙(最勝老人):
- 八大童子
信仰者
- 不空:五台山に金閣寺造営。各地の寺院に文殊師利菩薩院を設置。食堂に文殊を祀ることを提案。
- 泰善:勤操とともに貧者救済の文殊会を私的に開いている。
- 最澄:比叡山に文殊堂。
- 円仁:五台山を巡礼。比叡山に文殊楼建立。
- チョウ然:愛宕山を日本の五台山にしようとした。
- 成尋:『参天台五台山記』を記す。
- 叡尊:忍性を派遣して各地で文殊供養を行う。
- 忍性:文殊供養を行う。文殊の化身とされた行基を信仰する。
- 文観:文観の文は文殊に由来。奈良般若寺本尊の文殊像を造立。
- 明恵
- 天海:文殊の申し子と言われた
垂迹・化身
系譜
中国
日本
- 金戒光明寺文殊塔
- 安倍文殊院
- 智恩寺
- 大聖寺_(高畠町)
- 土佐・竹林寺
- 大和・竹林寺
- 家原寺:行基の生誕地
- 般若寺
- 文殊仙寺
- 東三条院文殊堂:奝然が発願し、弟子の嘉因が宋から請来した文殊を祀る堂。その後、文殊は平等院に移るがその後は不明。
- 延暦寺文殊楼
- 寛永寺文殊楼
古典籍
画像
参考文献
- 『仏教文化事典』