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御霊信仰
出典:安藤希章著『神殿大観』(2011-)
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*和田義盛(1147-1213):鎌倉幕府の初代侍所別当。北条家の陰謀により和田合戦で一族と共に滅亡。[[三浦・白旗神社|白旗神社]]祭神。 | *和田義盛(1147-1213):鎌倉幕府の初代侍所別当。北条家の陰謀により和田合戦で一族と共に滅亡。[[三浦・白旗神社|白旗神社]]祭神。 | ||
*[[土御門天皇]](1195-1231):水無瀬神宮、新宮神社、[[阿波神社]]に祀られる。 | *[[土御門天皇]](1195-1231):水無瀬神宮、新宮神社、[[阿波神社]]に祀られる。 |
2019年3月18日 (月) 時点における版
御霊信仰 |
目次 |
概要
御霊信仰は、祟りを起こす不慮の死を遂げた人物の神霊に対する信仰。霊神信仰、招魂社も参照。 御霊神社と呼ばれる他、若宮神社、大王神社とも呼ばれる。
祇園御霊会などの疫神信仰(牛頭天王信仰)とは一応、区別しておく。
「祟りを起こしたというが神社はない」、「明確な祟りの記録はないが憤死して神社に祀られている」など、御霊信仰と呼んでいいのかどうか曖昧な事例も多いが、「祟りがあった」と認識されていたこと、神社などに祀られたことの2点を目安として、総合的に判断する。
歴史
主な神社
- 五条・御霊神社:奈良県五條市。祭神は井上内親王。霊安寺鎮守。
- 火雷神社
- 宮前霹靂神社
- 上御霊神社:京都府京都市上京区。上出雲寺鎮守。
- 下御霊神社:京都府京都市下京区。下出雲寺鎮守。
- 北野天満宮:京都府京都市北区。祭神は菅原道真。
- 上桂御霊神社:京都府京都市西京区。祭神は伊予親王など。
- 下桂御霊神社:京都府京都市西京区。祭神は橘逸勢など。
- 西寺御霊堂:京都府京都市南区。西寺鎮守。
- 八所御霊神社:奈良県奈良市秋篠町。秋篠寺鎮守。
- 元興寺・御霊神社:奈良県奈良市薬師堂町。祭神は井上内親王・他戸親王など。元興寺鎮守。
- 崇道天皇社:奈良県奈良市紀寺町。祭神は崇道天皇。璉珹寺鎮守。
八所御霊
室町時代の吉田兼満著の『神祇拾遺』によると以下を八所御霊とする。
- 藤社:舎人親王
- 京極上御霊:崇道天皇・吉備公(異本:吉備公)
- 京極下御霊:伊予親王
- 高野御霊:藤原大夫人(異本:崇道天皇)
- 木津御霊:藤原広嗣
- 上桂御霊:菅原天神
- 下桂御霊:橘逸勢
- 綴喜御霊:文屋宮田丸
人物と神社
以下のリストは没年順とする。
奈良時代
- 長屋王(684-729):高市皇子王子。天武天皇の皇孫。「長屋王の変」で自害に追い込まれた。怨霊になったと語られたのは事件当時ではなく、後世になってからのことであり、そのため目立った祭祀の対象にはなっていない。奈良県奈良市にある長屋王神社は長屋王邸跡に近年建てられたもの。奈良県生駒郡平群町に長屋王墓と妃の吉備内親王墓がある。
- 舎人親王(676-735):天武天皇皇子。藤森神社の祭神で、御霊神にみなされることがあるが理由は不明。墓所は所在不明だが、候補地として黄金塚陵墓参考地がある。
- 藤原広嗣(?-740):藤原宇合の長男。天平10年、大宰府に左遷。「藤原広嗣の乱」を起こして討たれた。玄昉を祟り殺したという。鏡神社、南都・鏡神社
- 吉備真備(695-775):貴族。学者。吉備氏。左遷と出世を繰り返すが、怨霊になる動機がないと昔から指摘されている。
- 井上内親王(717-775):光仁天皇の皇后。聖武天皇の皇女。天皇を呪詛したとして廃后され、幽閉。藤原百川に毒殺されたともいう。百川は祟りを受けて死んだという。顕著な怨霊の初例とされる。五条・御霊神社祭神。
- 他戸親王(761-775):光仁天皇第四皇子。生母の井上内親王の呪詛事件で廃太子となり、幽閉。藤原百川に毒殺されたともいう。
- 崇道天皇(750-785):本名は早良親王。光仁天皇第二皇子。藤原種継射殺事件に関連して謀反を企てたとされ、幽閉。淡路島に配流の途中で死去。桓武天皇に祟ったという。
- 藤原吉子(?-807):桓武天皇妃。伊予親王の生母。「伊予親王の変」で親王と共に自害。「藤原夫人」。
- 伊予親王(?-807):桓武天皇皇子。「伊予親王の変」で謀反の疑いをかけられ、乙訓寺に幽閉。生母藤原吉子と共に服毒して自害。平城天皇に祟ったという。
- 藤原仲成(764-810):藤原種継の長子。薬子の兄。「観察使」。「薬子の変」で討たれた。
- 橘逸勢(?-842):官僚。橘氏。承和の変で配流。遠江で死去。下桂御霊神社
- 文室宮田麻呂(生没年不詳):官僚。謀反を疑われ、承和10年(843)伊豆配流。
平安時代
- 菅原道真(845-903):北野天満宮、太宰府天満宮
- 平将門(?-940):神田神社
- 源義平(1141-1160):御霊神社(埼玉県東松山市)
- 崇徳天皇(1119-1164):白峰神宮、金刀比羅宮
- 今井兼平(1152-1184):木曽義仲に従い挙兵。近江で討死。今井神社
- 弁慶(?-1189):弁慶社(闘鶏神社内)
- 源義経(1159-1189):藤沢・白旗神社
- 平景清(生没年不詳):生目神社祭神。
- 曽我兄弟:
- 寛算(寛筭・桓算)(生没年不詳):僧侶。藤原師輔に祟ったという。天満宮に祀られることが多い。
鎌倉時代
- 三浦義明(1092-1180):平安時代末の武将。平氏。源頼朝の挙兵に応じたが衣笠城を守って戦死。満昌寺御霊神社祭神。
- 平盛久(生没年不詳):壇ノ浦の合戦で敗れるが、斬首を免れたという。御霊信仰かどうかは微妙。盛久権現。盛久神社。
- 和田義盛(1147-1213):鎌倉幕府の初代侍所別当。北条家の陰謀により和田合戦で一族と共に滅亡。白旗神社祭神。
- 土御門天皇(1195-1231):水無瀬神宮、新宮神社、阿波神社に祀られる。
- 後鳥羽天皇(1180-1239):水無瀬神宮、新宮神社、隠岐神社に祀られる。
- 源実朝(1192-1219):鎌倉幕府3代将軍。頼朝の次男。柳営明神。柳営社祭神。鶴岡八幡宮内の白旗神社に合祀。
- 順徳天皇(1197-1242):水無瀬神宮、新宮神社、真野宮に祀られる。
- 道智(1217-1269):禅林寺15世。園城寺長吏。九条道家の子。南禅寺最勝院に祀られる。
- 渋谷有重(?-1281):入来院有重。元寇で戦死。若宮神社。重来神社に合祀。
- 東郷重親(1286-1308):渋谷重親。1308年(延慶1年)9月23日に淵脇山の穴で憤死。23歳。親大明神。紫尾神社(親神社)。
- 矢瀬主馬佑:御津賀社(人吉城、廃絶)
- 平河藤高:山田大王神社
- 平河義高:荒田大王神社
- 平河盛高:横瀬大王神社
- 平河師高:深田大王神社
- 平河重高:平川大王神社
- 緒方惟栄:二宮八幡社
- 大野泰基:二宮八幡社、御霊神社
- 木元夕路木:稲主神社
- 讃岐局:源頼家の室で比企能員の娘。北条家に滅ぼされた。 蛇苦止明神。妙本寺蛇苦止堂に祀られる。
南北朝・室町時代
- 新田義興:矢口・新田神社
- 島津忠国(1403-1470):島津家9代。子の立久に実権を奪われたことについてクーデター説もある。1496年(明応5年)に神像が制作され、翌年、小城権現社に祀られた。小城権現社は鶴嶺神社に合祀されたと思われる。
南朝関係は南朝人物旧跡を参照
戦国時代
- 九鬼澄隆:九鬼岩倉神社
- 菊姫:増福院
- 相良治頼:西村大王神社、治頼神社
- 城井鎮房:城井神社
- 城井朝房:祟りが起こったので宇都宮神社(玉東町木葉)に合祀。
- 城井鎮房の家臣:扇城神社
- 上村長種:若宮神社(上村白髪神社内)。相良長種。
- 上村頼孝:正宮八幡(上村白髪神社内)
- 上村頼継:大王神社(上村白髪神社内)
- 大友政親(-1496):戸室御霊社
- 大野泰基:野村御霊神社、二宮八幡社
- 波多親:朝鮮出兵の遅参などで秀吉の怒りを買い滅亡。一族郎党の怨霊は「岸岳末孫」などの名で佐賀県各地に祀られている。
- 小野道好(政次):井伊家の家老。主君を裏切り処刑されたが、祟ったとされ、但馬明神として祀られたという。二宮神社内の天王社に合祀された。
- 吉川興経(1508-1550):戦国武将。毛利元就の策略で家を乗っ取られ殺害された。吉香神社に祀られた。
- 島津忠兼(?-1565):讒言され殺された。若宮大明神。
- 明智光秀(1528-1582):戦国武将。豊臣秀吉に敗れた。福知山・御霊神社
- 真田清鏡:在庁神社は岩手県盛岡市にある霊社。浅岸薬師神社内。また清鏡神社?
- 朝倉義景(1533-1573):戦国時代の越前の武将。織田信長に敗れた。祟りを恐れた松平家が安波賀春日神社境内の瀧殿社に祀った。
- 築山殿(1542-1579):徳川家康の正室。信康の生母。信康と共に処刑された。岡崎八柱神社。
- 松平信康(1559-1579):徳川家康の長男。武田勝頼と内通を疑われて自害。出羽・中山神社、岡崎若宮八幡宮。復鎮霊社。
- 入来院重豊(?-1583):嗣子なく入来院家は島津家に乗っ取られた形となった。広瀬神社。重来神社に合祀か。
- 吉良親実(1563-1588):戦国武将。長宗我部家の継承争いで自刃。吉良神社(木塚明神)に祀られた。
- 江田隆貫:三次市松原八幡神社に御霊神社がある。
- 大蔵(生没年不詳):飯道寺岩本院の山伏。伊賀で自害。大蔵八幡宮に祀られた(下柘植の日置神社境内に遷座)。
- 九戸政実(?-1591):南部家に仕えた武将。南部家の当主を主張し、南部信直と対立して討伐された。政実神社(九戸神社内)、九戸政実神社(呑香稲荷神社内)に祀られる。
- 入来院重時(1573-1600):入来院重豊の養嗣子。関ヶ原の戦いで戦死。重来神社。
江戸時代
- 清玄坊:清玄坊神社
- 佐倉惣五郎(生没年不詳):怨霊となった義民。東勝寺宗吾霊堂、口ノ宮神社、義雲宮。
- 山家清兵衛(1579-1620):宇和島藩家老。政敵に暗殺された。和霊神社、今治・和霊神社
- 島津久章(?-1639):新城島津家初代当主。鹿児島藩により突如流刑処分となり、乱闘の結果殺害された。大和大明神。鹿児島県指宿市岩本に大和神社があった。
- 小野尊俊:日御碕神社神職。松江・推恵神社、隠岐・推恵神社
- 薫的(1625-1671):曹洞宗瑞応寺住職。異を唱えて投獄され獄死。薫的神社祭神。
- 村上兄弟:吾清霊社
- 松平永兼:暘谷霊社。松本神社。
- 牧野秀成:弥彦神社五所宮(祭祀は廃され十柱神社となる)
- 多田加助:義民。貞享義民社。
- 高橋安之丞(?-1688):義民。若宮神社。
- 大竹与茂七(1678-1713):義民。五十志霊神社
- お岩:四谷於岩稲荷田宮神社、新川於岩稲荷田宮神社。
- お菊:お菊神社(姫路・十二所神社)
- 柏巌門昌:祟りを起こすが、神社はない。
- お花:林下寺お花大権現。
- お綱:真光院お綱堂。
- お花:お花善神(徳守神社内)
- おきた姫(於喜多):新田開発のために人柱にされたという。沖田神社祭神。
- 井原与右衛門:隠田の罪で一家処刑。六人塚。桜井神社に祀られた。
- 松平頼雄(-1718):西条藩世嗣。廃嫡された。邦安神社(日前神宮内)
- 門馬隆経:中村藩家老。体興霊神(涼ケ岡八幡神社内)。
- 僧侶某:今治の正福寺(現在の高野山今治別院。蔵敷八幡宮別当)住職。政治批判をして捕まり簀巻きにされて海に投じられた。のち藩主に祟る。恕霊神という名で蔵敷八幡(吹揚神社に合祀)の近くに祀られた。
- 恵林:弓立円通寺の僧。桜木明神に祀られた。
- 豊島忠松:神社はない?
- 日忌様:謀殺した代官豊島忠松の亡霊に殺された25人の若者。
- 七人童子(-1750):権兵衛神社(香川県笠岡)
- 養心院:林姫。7代多久茂尭長女。西原神社に祀られた。
- 朝鮮人の童子二人:多久安順が慶長の役で連行してきた子供。道に迷っていたところを連れ帰った。あまりに賢いので警戒して処刑したが、処刑した家臣の家に凶事が続いた。そのため高麗権現として祀った。多久市多久町。松山墓地の入口にある。
東大寺修二会神名帳に登場する御霊神
由来がはっきりしない。
その他
- 鎌倉権五郎信仰
- 那須・御霊神社:栃木県那須郡那珂川町恩田。那須与一を祀る。
- 小野御霊神社:京都府京都市左京区大原上野町。惟喬親王を祀る。
- 大津鳥居川・御霊神社:滋賀県大津市鳥居川町。弘文天皇を祀る。敗戦後ここに逃れて没したとも。
- 大津北大路・御霊神社:大津市北大路。弘文天皇を祀る。没地の瀬田橋に近い。
- 大津大江・御霊神社:滋賀県大津市大江。弘文天皇を祀る。近江国庁跡に近い。
- 木津御霊神社:京都府木津川市木津宮ノ裏。祭神は藤原広嗣、早良親王、伊予親王。
- 満昌寺御霊神社:神奈川県横須賀市大矢部。満昌寺にある。三浦義明を祀る。
- 御霊神社:京都府木津川市加茂町。山城国分寺跡にあったが発掘調査のために現在地に遷座。恭仁神社に合祀。
- 灯明寺御霊神社:京都府木津川市加茂町兎並寺山。祭神は崇道天皇、井上内親王、長部親王、藤原吉子、文屋宮田麻呂、橘逸勢。
- 衣笠御霊神社(六請神社):京都府京都市北区等持院中町。
- 正代御霊神社:埼玉県東松山市正代。源義平(悪源太)を祀る。平清盛暗殺を図ったが返り討ちにあった。
- 戸室・御霊神社:大分県臼杵市戸室。非業の死を遂げた藩主大友政親を祀る。
- 野村・御霊神社:大分県臼杵市野村。大友氏に滅ぼされた大野泰基を祀る。
- 大泊・御霊神社:大分県臼杵市大泊。「大友家の二階崩れの変」に巻き込まれ処刑された田口与一郎を祀る。
- 風成・御霊神社:大分県臼杵市風成。「大友家の二階崩れの変」に巻き込まれ処刑された田口与一郎の姉を祀る。
- 桑原・御霊神社:大分県臼杵市桑原。藤原広嗣を祀る。
- 恩智御霊神社:岡山県真庭市蒜山上福田。黒住宗忠が最初に奉斎された神社。廃絶。
- 御霊明神社:金子近範。埼玉県入間市木蓮寺。
- 大国魂神社:東京都府中市宮町。武蔵国総社。官幣小社。別表神社。主祭神の他に御霊大神を祀る、