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官修墳墓
出典:安藤希章著『神殿大観』(2011-)
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==概要== | ==概要== | ||
- | '''官修墳墓'''(かんしゅうふんぼ)は、日本政府が管理する、幕末から西南戦争にかけての官軍死者の墓地。昭和17年(1942)までに1013所が設置された。1所に1柱が葬られたわけではなく、複数柱が葬られた場合もあり、1柱の戦没者が複数の墓地に祀られている場合もある。戦前は政府が修復費を支給していた。現在の法的位置付けは不詳。昭和33年(1958)に政府の調査があったが、管理はされていないようである。そのため、毀損、移転した墓もある。なお正式には地名を付して「'''●●官修墳墓''' | + | '''官修墳墓'''(かんしゅうふんぼ)は、日本政府が管理する、幕末から西南戦争にかけての官軍死者の墓地。昭和17年(1942)までに1013所が設置された。1所に1柱が葬られたわけではなく、複数柱が葬られた場合もあり、1柱の戦没者が複数の墓地に祀られている場合もある。戦前は政府が修復費を支給していた。現在の法的位置付けは不詳。昭和33年(1958)に政府の調査があったが、管理はされていないようである。そのため、毀損、移転した墓もある。なお正式には地名を付して「'''●●官修墳墓'''」と称したが煩雑なので、通称などを優先する。被葬者は調査漏れがなければ、[[靖国神社]]の祭神である。 |
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+ | [[京都]]、会津若松、熊本などの九州などの激戦地や、東北戦線などに出兵した官軍藩の地元に多い。 | ||
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===06 山形県=== | ===06 山形県=== | ||
+ | 『大日本帝国内務省統計報告』 によると44所あった。下記の2所はその候補地。 | ||
+ | *山形県山形市薬師公園の鹿児島藩墓地 | ||
+ | *山形県鶴岡市常念寺の官軍墳墓 | ||
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+ | 『大日本帝国内務省統計報告』によると2所があった。下記1所はその候補地。 | ||
+ | *[[膳所烈士墳墓所]]:滋賀県大津市。 | ||
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[[坂本龍馬]]など、幕末の抗争で亡くなった志士などの墓が多い。『大日本帝国内務省統計報告』によると29所があったとされる。 | [[坂本龍馬]]など、幕末の抗争で亡くなった志士などの墓が多い。『大日本帝国内務省統計報告』によると29所があったとされる。 | ||
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+ | 『大日本帝国内務省統計報告』によると24所あった。 | ||
+ | *赤妻官修墳墓:山口県山口市。錦小路頼徳墓。[[赤妻神社]]が建てられた。 | ||
+ | *勝野原官修墳墓:山口県下関市。中山忠光墓。[[長門・中山神社]]が建てられた。 | ||
+ | *(奇兵隊堂ノ尾墓地?) | ||
+ | *江良官修墳墓:山口県山口市 | ||
+ | *光明寺官修墳墓:山口県下関市。いわゆる「光明寺党」がここで結成。 | ||
+ | *本行寺官修墳墓:山口県下関市。 | ||
+ | *了円寺官修墳墓:山口県下関市。 | ||
+ | *引接寺官修墳墓:山口県下関市。 | ||
+ | *東光寺官修墳墓:山口県下関市。東光寺は奇兵隊本陣 | ||
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*なし | *なし | ||
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===40 福岡県=== | ===40 福岡県=== | ||
===41 佐賀県=== | ===41 佐賀県=== | ||
+ | 佐賀の乱があった。『大日本帝国内務省統計報告』によると10所があった。下記を含むと思われる。 | ||
+ | *[[佐賀官軍墓地]]: | ||
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===42 長崎県=== | ===42 長崎県=== | ||
===43 熊本県=== | ===43 熊本県=== | ||
- | * | + | *『大日本帝国内務省統計報告』によると163所があったが下記の1墓地ごとに複数カ所が数えられていると思われる。 |
*[[城ノ原官軍墓地]] | *[[城ノ原官軍墓地]] | ||
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===46 鹿児島県=== | ===46 鹿児島県=== | ||
+ | 『大日本帝国内務省統計報告』によると29所があった。下記が候補。 | ||
+ | *[[鹿児島官軍墓地]]:鹿児島県鹿児島市。祇園洲官軍墓地ともいう。 | ||
+ | *[[岩川官軍墓地]]:鹿児島県曽於市大隅町。 | ||
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===47 沖縄県=== | ===47 沖縄県=== | ||
*なし | *なし |
2015年11月22日 (日) 時点における版
官修墳墓 |
概要
官修墳墓(かんしゅうふんぼ)は、日本政府が管理する、幕末から西南戦争にかけての官軍死者の墓地。昭和17年(1942)までに1013所が設置された。1所に1柱が葬られたわけではなく、複数柱が葬られた場合もあり、1柱の戦没者が複数の墓地に祀られている場合もある。戦前は政府が修復費を支給していた。現在の法的位置付けは不詳。昭和33年(1958)に政府の調査があったが、管理はされていないようである。そのため、毀損、移転した墓もある。なお正式には地名を付して「●●官修墳墓」と称したが煩雑なので、通称などを優先する。被葬者は調査漏れがなければ、靖国神社の祭神である。
京都、会津若松、熊本などの九州などの激戦地や、東北戦線などに出兵した官軍藩の地元に多い。
歴史
制度
一覧表
都道府県 | 明治34-38 (1901-1905) | 明治39-40 (1906-1907) | 明治41-42 (1908-1909) | 明治43-大正5 (1910-1916) | 大正6 (1917) | 大正7-9 (1918-1920) | 大正10-昭和1 (1921-1926) | 昭和2-17 (1927-1942) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
01 北海道 | 14 | 14 | 14 | 14 | 14 | 14 | 13 | 13 |
02 青森県 | 10 | 10 | 15 | 15 | 15 | 15 | 15 | 15 |
03 岩手県 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 |
04 宮城県 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
05 秋田県 | 128 | 128 | 128 | 128 | 128 | 127 | 127 | 127 |
06 山形県 | 44 | 44 | 44 | 44 | 44 | 44 | 44 | 44 |
07 福島県 | 186 | 186 | 186 | 186 | 186 | 186 | 186 | 186 |
08 茨城県 | 14 | 14 | 14 | 14 | 14 | 14 | 14 | 14 |
09 栃木県 | 85 | 85 | 85 | 85 | 85 | 83 | 83 | 83 |
10 群馬県 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 |
11 埼玉県 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
12 千葉県 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 |
13 東京都 | 25 | 25 | 25 | 25 | 25 | 25 | 25 | 25 |
14 神奈川県 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 |
15 新潟県 | 91 | 91 | 85 | 79 | 85 | 83 | 83 | 83 |
16 富山県 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 |
17 石川県 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
18 福井県 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
19 山梨県 | 0 | |||||||
20 長野県 | 44 | 44 | 44 | 44 | 44 | 44 | 44 | 44 |
21 岐阜県 | 0 | |||||||
22 静岡県 | 0 | |||||||
23 愛知県 | 0 | |||||||
24 三重県 | 0 | |||||||
25 滋賀県 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 |
26 京都府 | 24 | 24 | 25 | 25 | 25 | 25 | 29 | 29 |
27 大阪府 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 |
28 兵庫県 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
29 奈良県 | 0 | |||||||
30 和歌山県 | 0 | |||||||
31 鳥取県 | 0 | |||||||
32 島根県 | 0 | |||||||
33 岡山県 | 28 | 28 | 28 | 28 | 28 | 28 | 28 | 28 |
34 広島県 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 |
35 山口県 | 25 | 25 | 25 | 25 | 25 | 25 | 26 | 24 |
36 徳島県 | 0 | |||||||
37 香川県 | 0 | |||||||
38 愛媛県 | 0 | |||||||
39 高知県 | 0 | |||||||
40 福岡県 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 8 | 8 |
41 佐賀県 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 |
42 長崎県 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 17 | 17 |
43 熊本県 | 96 | 96 | 97 | 97 | 97 | 97 | 163 | 163 |
44 大分県 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 12 | 12 |
45 宮崎県 | 8 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 | 12 | 12 |
46 鹿児島県 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 | 29 | 29 |
47 沖縄県 | 0 | |||||||
合計 | 898 | 897 | 898 | 892 | 898 | 893 | 1015 | 1013 |
- 明治34年に官祭招魂社および官修墳墓の制度が定められる。
- 大正12年は震災のため調査を欠く
- 大正11年以前はその年の6月末日現在。それ以降は12月末日現在。
- 『大日本帝国内務省統計報告』には参考として過去の数値が掲載されていることがあり、当該年度の報告書と数値が食い違うことがあるが、過去の数値は無視した。
比定地と候補地
01 北海道
02 青森県
03 岩手県
- 『大日本帝国内務省統計報告』によると6所があった。下記の2所はその候補地。
- 官軍勇士墓:岩手県宮古市鍬ケ崎にある。宮古市指定文化財[1]。
- 官軍小西周右衛門の墓:岩手県宮古市の常安寺にある。宮古市指定文化財[2]。
04 宮城県
05 秋田県
06 山形県
『大日本帝国内務省統計報告』 によると44所あった。下記の2所はその候補地。
- 山形県山形市薬師公園の鹿児島藩墓地
- 山形県鶴岡市常念寺の官軍墳墓
07 福島県
08 茨城県
09 栃木県
10 群馬県
11 埼玉県
12 千葉県
13 東京都
14 神奈川県
15 新潟県
16 富山県
17 石川県
18 福井県
19 山梨県
- なし
20 長野県
21 岐阜県
- なし
22 静岡県
- なし
23 愛知県
- なし
24 三重県
- なし
25 滋賀県
『大日本帝国内務省統計報告』によると2所があった。下記1所はその候補地。
- 膳所烈士墳墓所:滋賀県大津市。
26 京都府
坂本龍馬など、幕末の抗争で亡くなった志士などの墓が多い。『大日本帝国内務省統計報告』によると29所があったとされる。
- 大雲院佐土原藩招魂社:大雲院内に複製が現存。実質的に石碑しかなかったが、官修墳墓ではなく官祭招魂社として扱われた。
- 東福寺鹿児島藩招魂社:東福寺即宗院内に現存。実質的に石碑しかなかったが、官修墳墓ではなく官祭招魂社として扱われた。
- 東福寺山口藩招魂社:東福寺裏の仲恭天皇陵隣接地に現存。実質的に石碑しかなかったが、官修墳墓ではなく官祭招魂社として扱われた。
- 泉涌寺招魂社:戒光寺(泉涌寺内)にあったらしいが不詳。実質的に石碑しかなかったが、官修墳墓ではなく官祭招魂社として扱われたと思われる。
- (相国寺山口藩墓所):候補地。相国寺内にある。
- (相国寺薩摩藩墓所):候補地。相国寺内にある。
- (長州人首塚):候補地。上善寺内にある。
- (大黒寺墓地):候補地。大黒寺内にある。寺田屋騒動の死者を葬る。
- (三縁寺墓地):候補地。三縁寺内にある。池田屋事件の死者を葬る。
- (金戒光明寺会津藩墓地):金戒光明寺内にある。官修墳墓ではない?
27 大阪府
28 兵庫県
29 奈良県
- なし
30 和歌山県
- なし
31 鳥取県
- なし
32 島根県
- なし
33 岡山県
『大日本帝国内務省統計報告』によると28所があったとされ、『岡山県護国神社百年史』に掲載する下記の28柱の墓と思われる。
- 杉山喜之介節雄墓
- 花房喜三太義忠墓
- 霜山健次郎豊忠墓
- 平井源八郎重道墓
- 太田万治正順墓
- 伊原儀左衛門悌盛墓
- 尾関久五郎孝友墓
- 内藤恵三郎信時墓
- 岡竹助蔵直道墓
- 石黒幸三郎正智墓
- 塩尻鶴右衛門浜雄墓
- 国末藤左衛門興晴墓
- 中村亀之進成儀墓
- 赤井虎蔵定致墓
- 高木定之丞忠景墓
- 田中兼治近吉墓
- 岡崎秀松遠則墓
- 朝倉芳之介時景墓
- 長尾亀八景次墓:岡山県岡山市北区建部町西原の墓地に現存?
- 伊原常三郎道行墓
- 緒方益太郎邦昌墓
- 斎藤小十郎墓:岡山県倉敷市の正福寺に現存?
- 中西寿之介厚載墓
- 三宅彦太郎守徳墓
- 雀部八郎時宜墓
- 梶川虎伝次盛久墓
- 吉岡安次郎憶美墓
- 山本五太夫林光墓
34 広島県
35 山口県
『大日本帝国内務省統計報告』によると24所あった。
- 赤妻官修墳墓:山口県山口市。錦小路頼徳墓。赤妻神社が建てられた。
- 勝野原官修墳墓:山口県下関市。中山忠光墓。長門・中山神社が建てられた。
- (奇兵隊堂ノ尾墓地?)
- 江良官修墳墓:山口県山口市
- 光明寺官修墳墓:山口県下関市。いわゆる「光明寺党」がここで結成。
- 本行寺官修墳墓:山口県下関市。
- 了円寺官修墳墓:山口県下関市。
- 引接寺官修墳墓:山口県下関市。
- 東光寺官修墳墓:山口県下関市。東光寺は奇兵隊本陣
ほか
36 徳島県
- なし
37 香川県
- なし
38 愛媛県
- なし
39 高知県
- なし
40 福岡県
41 佐賀県
佐賀の乱があった。『大日本帝国内務省統計報告』によると10所があった。下記を含むと思われる。
42 長崎県
43 熊本県
- 『大日本帝国内務省統計報告』によると163所があったが下記の1墓地ごとに複数カ所が数えられていると思われる。
- 城ノ原官軍墓地
- 肥猪町官軍墓地
- 下岩官軍墓地
- 高瀬官軍墓地
- 宇蘇浦官軍墓地
- 高月官軍墓地
- 山鹿官軍墓地
- 月見殿官軍墓地
- 七本官軍墓地
- 明徳官軍墓地
- 寄鶴官軍墓地
- 小峯官軍墓地
- 花岡山陸軍埋葬地
- 城山上代官軍墓地
- 若宮官軍墓地
- 横手官軍墓地
- 永尾官軍墓地
- 峰崎官軍墓地
- 田浦官軍墓地
- 陣内官軍墓地
- 尾上官軍墓地
44 大分県
45 宮崎県
『大日本帝国内務省統計報告』によると12所があった。下記の墓地にそれぞれ複数カ所あった可能性がある。
46 鹿児島県
『大日本帝国内務省統計報告』によると29所があった。下記が候補。
47 沖縄県
- なし
参考文献
- 『大日本帝国内務省統計報告』