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修験道
出典:安藤希章著『神殿大観』(2011-) 最終更新:2020年4月14日 (火)
修験道(しゅげんどう)は、日本在来の山岳信仰を基盤とし、神道、仏教(特に密教)、道教などと習合しながら成立した日本の宗教。森羅万象は大日如来の化身と捉える密教思想を背景に、蔵王権現や不動明王などを中心的尊格とする。明治初年に政府の弾圧を受けて、廃絶とされた経緯があり、現在では仏教教団として存続しているものが多い。根本道場は、開祖役小角が開いた、吉野・熊野を結ぶ大峰山にある大峰山寺(および金峰山寺)である。主に天台宗(寺門派)の聖護院を本山とする本山派と、真言宗の醍醐寺三宝院を本山とする当山派に分かれる。葛城山も開祖修行地として重要視されている。地方では、東北地方の出羽三山、九州の英彦山、中国地方の五流修験などが有力で、独立傾向が強い。特に出羽三山は開祖を役小角ではなく、蜂子皇子としており、独自性を打ち出している。また富士山、石鎚山、木曽御嶽山もガラパコス的発展を遂げ、修験道からは半ば独立したような固有の世界を形成している。また天台密教、真言密教の総本山である比叡山や高野山でも修行が行われた。
目次 |
歴史
修験道の年表を参照
役小角の伝説
古代
中世
- 熊野信仰が興隆。熊野詣が流行。
- 大和国の大寺院を中心とした修験教団が形成。後の当山派。
近世
近代
- 神仏分離・廃仏毀釈と修験道廃止
- 教派神道教団の成立
- 修験道教団の復興と再編成
信仰
人物
宗派・教団
歴史的・伝統的な宗派・流派
(「◼︎◼︎修験」という言い方は様々なニュアンスがあるが、ここではその地域に拠点とする教団と宗教伝統を意味する)
- 中央霊場に拠点を置く教団
- 全国に配下を持つ教団:
- 地方霊場を拠点とし、さらに周辺地域に影響力を持った地方教団
- 出羽三山修験:出羽国(山形県)の出羽三山を根本道場とする修験道教団群。特に羽黒山を中心とする天台宗の流派と修行体系を指して羽黒修験と呼ぶ。近世、寛永寺末となり本山派に入らなかったため、修験道羽黒派とも呼ばれる。またそれとは別に湯殿山を中心とした真言宗系の修験宗派もあり、一世行人と呼ばれる行者の任命権を保持し、東北地方各地に末寺を擁した。
- 英彦山修験:英彦山を拠点とした天台宗の修験道教団。九州各地に配下を持った。座主は後伏見天皇の皇胤が世襲したとされる。廃仏棄釈で廃絶。近世は本山派の末寺取り込みに抵抗の末勝訴し、寛永寺末となった。そのため、修験道英彦山派とも呼ばれる。
- 五流修験:五流尊瀧院を拠点とした天台宗の修験道教団。児島半島を領土とした。現在に至るまで後鳥羽天皇の皇胤が首長を務める。近世は本山派の配下となった。
- 宝満山修験:宝満山を拠点とした天台宗の修験道教団。大宰府設置以来、あるいは最澄以来の歴史を持つ。近世、同じ九州を代表する霊山である英彦山のようには独立を維持できず、本山派の傘下に入ったが、英彦山と対等の格式を保った。廃仏棄釈で廃絶。
- 近世・近代に勃興した山岳系宗教
- 木曽御嶽信仰:信濃国(長野県)の木曽御嶽山を根本道場とする山岳宗教。江戸時代後期の覚明・普寛が創始。天台宗の影響が強いがそれにとらわれない。多数の教団・講社がある。御座(おざ)と呼ばれるシャーマニズム儀礼と、亡くなった行者を神として祀る霊神碑建立が特徴。関東地方と東海地方を中心に広まる(長野県にはそれほど多くはない)。影響下の霊山も各地にある。
- 角行系富士信仰:甲斐国(山梨県)・駿河国(静岡県)の富士山の神を奉斎する山岳宗教系の宗教伝統。江戸時代初期の角行が創始し、江戸時代中期の身禄が活躍し、江戸を中心に広まった。多数の教団・講社がある。関東地方各地に富士塚を築造したのが特徴。
- 石鎚山信仰:伊予国の石鎚山を拠点とする山岳宗教。多数の教団・講社がある。四国や中国地方で信仰される。
現在の教団
中央・全国規模の教団
- 金峯山修験本宗:金峰山寺を本山とする吉野修験の教団。
- 本山修験宗:聖護院を本山とする本山派の教団。
- 真言宗醍醐派:醍醐寺、三宝院を本山とする当山派の教団。ただし修験以外の寺院も含む。
- 天台寺門宗:園城寺を本山とする本山派の教団。本来は修験以外がメイン。
地方の教団
独自発展した信仰の教団
- 御嶽教:奈良県に本部を置く木曽御嶽信仰の教団
- 木曽御嶽本教:黒沢御嶽神社を母体とする木曽御岳信仰の教団
- 富士御法:静岡県富士宮市に本部を置く角行系富士信仰の教団。
- 扶桑教:東京都世田谷区に本部を置く角行系富士信仰の教団。
- 真言宗石〓派:前神寺を本山とする石鎚信仰の教団。
- 石鎚山真言宗:伊予・極楽寺を本山とする石鎚信仰の教団。
- 尺間教会
- 三吉信仰
講社団体
- 神変講社近畿連合会:聖護院が組織した団体。
- 神変講社平安連合会:聖護院が組織した団体。
- 神変教会
- 醍醐教会
- 京阪醍醐講社
- 阪堺役講(岩組、光明組、京橋組、三郷組、鳥毛組、井筒組、五流組、両郷組)
- 大峰修験教会
- 真言宗醍醐派近畿連合会
- 聖役協会
新宗教
- 修験節律根本道場
- (鞍馬弘教)
- 箱根大天狗山神社:箱根の神社の他、加波山神社がある。
地方霊山
神社神道系
霊山と聖地
山岳信仰も参照。
先達位
- 本山派(1802年):未先達、大先達、参仕修学者、直参、峰中出世
- 本山修験宗:准先達、先達、大先達、参仕大先達、直参大先達、峰中出世大先達
- 真言宗醍醐派:僧祇、越家、先達、大先達
未分類
- 山伏神楽:山伏が担い手だった神楽。東北地方に伝わる。早池峰神楽など。
- 山伏狂言:山伏を題材とした神楽。
資料
- 聖護院#資料も参照。
文献
- 三好英樹2011「中世後期根来寺内における修験道」[1]