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華厳宗

出典:安藤希章著『神殿大観』(2011-) 最終更新:2018年5月8日 (火)

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華厳宗(けごんしゅう)は、『華厳経』に依拠する仏教の宗派。宗祖は杜順で、法蔵が教学を大成した。中国での主な寺院に長安華厳寺大薦福寺終南山至相寺草堂寺五台山顕通寺杭州慧因院などがある。日本では東大寺・同尊勝院高山寺、朝鮮では浮石寺華厳寺が有名。賢首宗

目次

歴史

  • 『華厳経』は、様々な教典を統合して西域の于闐で編纂された。
  • 新羅は『華厳経』を国家的に重視した。華厳十刹。今でも韓国寺院には毘盧舎那仏を祀る毘盧殿があることが多い。
  • 遼・金代、華厳思想は密教と融合。日本でも。
  • 空海は、『十住心論』で、華厳を密教の一段階下に位置付けた。
  • 最澄は、『華厳五教章』を読んで、『法華経』を知った。
  • 日本では融通念仏宗も『華厳経』を所依経典とする。

一覧

中国

  • 長安
    • 華厳寺:陝西省西安市長安区。中国華厳宗の発祥地となった寺院。澄観の妙覚塔、杜順の無垢浄光宝塔が現存する。
    • 大薦福寺:陝西省西安市碑林区。小雁塔が現存する。法蔵旧跡。
    • 雲華寺:陝西省西安市。智儼が晩年にいた寺院。
    • 義善寺:陝西省西安市雁塔区。杜順が没した寺。
    • 崇福寺:陝西省西安市灞橋区。法蔵の旧跡。四十華厳が訳された場所。
    • 清浄寺:智儼が晩年にいた寺院。ここで死去。義湘が学ぶ。清禅寺。
  • 終南山:陝西省西安市。
    • 至相寺:陝西省西安市長安区。智儼が住した。
    • 草堂寺:陝西省西安市〓邑区。宗密が住した。
  • 慧因院:浙江省杭州市西湖区。
  • 華厳寺:山西省大同市城区。上華厳寺と下華厳寺に分かれた。
  • 太原
    • 奉聖寺:石刻華厳経が収められている。
  • 五台山
  • 因聖寺:浙江省杭州市?杜順が学んだ寺院か。
  • 鶏足山:雲南省大理ペー族自治州賓川県。
    • 華厳寺:
    • 悉檀寺:木増が本無釈禅を招いて創建。
  • 泰聖寺:懸甕山にある?八十華厳を刻んだ石幢がある。
  • 天寧寺:山西省呂梁市交城県。
  • 大足石窟寺院:四川省。宝頂山石窟に中国で最も大きい華厳三聖像がある。高さ7m。
  • 資中石窟寺院:四川省資陽市資中県。華厳三聖像がある。
  • 安岳石窟寺院:四川省資陽市安岳県。華厳洞に華厳三聖像がある。
  • 重龍山石窟寺院:四川省資陽市資中県。第93龕と第155龕に華厳三聖像がある。
  • 石鐘山石窟寺院:雲南省大理ペー族自治州剣川県。剣川石窟寺院。第4窟に華厳三聖像がある。
  • 石筍山磨崖仏:四川省成都市邛崍市大同鄉。華厳三聖像がある。
  • 飛来峰石窟:浙江省杭州市西湖区。霊隠寺の近く。青林洞に華厳三聖像がある。
  • 大慈寺:広東省清遠市。古庭善学がいた。
  • 再光寺:雲南省大理。普瑞がいた。
  • 崇聖寺:雲南省大理。
  • 華厳寺:安徽省安慶市樅陽県浮山鎮の浮山にある。古庭善学が講義。朗目本智が中興。
  • [[

朝鮮

日本

信仰

経典

  • 六十華厳
  • 八十華厳

諸書

中国

  • 『法界観門』
  • 『孔目章』
  • 『捜玄記』
  • 『探玄記』
  • 『華厳五教章』
  • 『華厳論』
  • 『華厳経疏』
  • 華厳五教章註釈
    • 『華厳五教章復古記』:師会著。
    • 『華厳五教章集成記』:希迪著。
    • 『華厳一乗分斉章義苑疏』:道亭著。
    • 『五教章析薪記』:観復著。

朝鮮

日本

  • 『華厳宗経論章疏目録』
  • 『華厳祖師伝』
  • 『華厳祖師絵伝』:華厳縁起とも。
  • 『華厳五十五所絵巻』:善財童子絵とも。
  • 華厳五教章註釈
    • 『華厳五教章指事』:東大寺寿霊著。奈良時代。
    • 『華厳五教章通路記』:凝然著。鎌倉時代。
    • 『華厳五教章問答抄』:審乗著。鎌倉時代。
    • 『五教章纂釈』:潭睿著。鎌倉時代。
    • 『五教章聴抄』:[[中性院聖憲著。1334年。
    • 『華厳五教章論義抄』:宗性著。
    • 『五教章視聴記』:志玉の談義を真福寺任舜が記録。1446年。
    • 『五教章見聞』:志玉の談義を道瑜が記録した講録。1447年。
    • 『五教章料簡』:頼瑜著。現存不詳。
    • 『五教章不審』:実英著。
    • 『五教章私』:大伝法院日秀著。1553年。
    • 『冠註華厳五教章』:智積院観応著。現在でも初学者のテキストとして使われている。
    • 『華厳五教章講讃』:穎川著。
    • 『華厳五教章講義』:湯次了栄著。

文献

  • 『華厳学研究資料集成』
  • 1975『金沢文庫資料全書 仏典 華厳編』


  • 湯次了栄1915『華厳大系』法林館
  • 湯次了栄1935『華厳学概論』
  • 湯次了栄1935『華厳五教章講義 仏教聖典講義大系 第15』仏教聖典講義刊行会
  • 高峯了洲1942『華厳思想史』
  • 坂本幸男1956『華厳教学の研究』平楽寺書店
  • 石井教道1964『華厳教学成立史』石井教道博士遺稿刊行会
  • 納富常天1964『鎌倉の教学 : 金沢文庫資料を中心とした華厳教学』鎌倉国宝館
  • 鎌田茂雄1965『中国華厳思想史の研究』東京大学出版会
  • 鎌田茂雄1975『宗密教学の思想史的研究―中国華厳思想史の研究 第2 』東京大学出版会
  • 鎌田茂雄1980『朝鮮華厳思想史の研究』
  • 鍵主良敬1968『華厳教学序説 : 真如と真理の研究』文栄堂
  • 木村清孝1977『初期中国華厳思想の研究』春秋社
  • 金知見1977『均如大師華厳学全書』後楽出版
  • 伊藤瑞叡1988『華厳菩薩道の基礎的研究』平楽寺書店:2013年に増補版。
  • 吉津宜英1985『華厳禅の思想史的研究』大東出版社
  • 吉津宜英1991『華厳一乗思想の研究』大東出版社
  • 石井公成1996『華厳思想の研究』春秋社
  • 中村薫2001『中国華厳浄土思想の研究』法蔵館
  • 張文良2006『澄観華厳思想の研究―「心」の問題を中心に』山喜房佛書林
  • 大竹晋2007『唯識説を中心とした初期華厳教学の研究 : 智儼・義湘から法蔵へ』大蔵出版,
  • 金天鶴2015『平安期華厳思想の研究―東アジア華厳思想の視座より』山喜房佛書林
  • 織田顕祐2017『華厳教学成立論』法蔵館


  • 藤丸要編2016『華厳 龍谷大学仏教学叢書5』自照社出版
  • 2013『称名寺聖教 尊勝院弁暁説草』勉誠出版
  • 木村清孝『中国華厳思想史』平楽寺書店
  • 木村清孝『華厳経入門』角川学芸出版
  • 『華厳学論集』
  • 藤丸要『華厳宗要義講読』永田文昌堂
  • 藤能成『元暁の浄土思想研究』民族社

諸仏

  • 毘盧舎那仏
  • 文殊菩薩
  • 普賢菩薩

人物

歴代

  • 1杜順(557-640):華厳宗の開祖。一定の寺に住まず、山野に寝起きした。遊行の旅が善財童子の姿と重なった。普賢行を修し、空を重視した『法界観門』を著したとされる。墓所は、長安・華厳寺跡に塔のみ残る。
  • 2智儼(602-668):華厳宗の実質的な開祖。終南山至相寺に住す。摂論宗地論宗を学び、心の問題を探求。唯識学と華厳思想を統合しようとした。『孔目章』では『亡是非論』の解く無心になってこそ『華厳経』の性起が起こる、つまり仏性が現れるとした。『捜玄記』は「華厳宗の立教開宗の書」と言われる。弟子に法蔵や義湘がいる。晩年は長安の雲華寺に住し、ついで清浄寺に移った。墓所は不明。通称は、至相大師、雲華尊者。
  • 3法蔵(643-712):華厳宗教学の大成者。智儼に師事。長安大薦福寺に住した。『十二門論宗致義記』は、空を究明。『大乗起信論義記』は、心を探求。『金師子章』を則天武后のために書いたという伝説がある。『探玄記』は、六十華厳の概説書。『華厳五教章』は、2種類ある。法蔵から義湘への手紙が日本に伝わっている。弟子に日本の審祥がいる。則天武后から賢首大師の号を贈られた。
  • 4澄観(738-839):五台山顕通寺に住した。禅にも関心を示す。『華厳経疏』は、八十華厳の概説書。さらにそれを敷衍して『随疏演義鈔』を著した。華厳学は、『老子』の「玄之又玄」を仏教的に解釈したものだとまでいう。墓所は、長安・華厳寺跡に塔のみ残る。通称は、清凉大師。
  • 5宗密(780-840):終南山草堂寺に住す。禅教一致を主張。『禅源諸詮集都序』。荷沢禅を学び、『円覚経』に傾倒。『円覚経大疏』を記す。その注釈として『大疏鈔』や『円覚経略疏』を書いた。さらに『略疏鈔』を書いた。『原人論』。「気の哲学」があるという。宋代の中国思想に大きな影響を与えた。

五祖にインドの馬鳴、龍樹を加えて七祖ともいう。

中国

  • 支法領:于闐で編纂された『華厳経』原本を中国に将来。
  • 仏陀跋陀羅(359-429):インドから来た僧侶。六十華厳(晋経、旧経)を訳す。
  • 霊弁(477-522):五台山で修行。『華厳論』を記す。
  • 慧命(531-568):『荘子』と『華厳経』を学び、『詳玄賦』を記す。一即多を解き、万物は仏の光明が貫徹したものだと説いた。
  • 曇遷(542-607):『亡是非論』を著した。無心となり「これは良い、これは悪い」とあげつらうことをしないことを説いた。
  • 実叉難陀(652-710):八十華厳(唐経、新経)を訳す。
  • 般若:入法界品(貞元経)を訳す。
  • 李通玄(635-730):『新華厳経論』。仏光三昧観を説く。
  • 晋水浄源(1011-1088):華厳宗中興とも呼ばれる。杭州慧因院に住す。散逸した華厳宗経典を高麗から逆輸入して整備した。
  • 可堂師会(1102-1166):
  • 義和(生没年不詳):

朝鮮

  • 慈蔵(607?-675?):中国五台山で学ぶ。643年帰国。
  • 元暁(617-686):650年、義湘と共に入唐しようとするが海門まで至って怪異に会い帰国。芬皇寺華厳寺で講じる。芬皇寺で死去。奔放な性格で、誰も構わず論難した。王女との間に子を儲けたとも。のち高麗時代の粛宗6年(1101)に大聖和静国師の号を贈られた。著作は『華厳経疏』『大乗起信論疏』『金剛三昧経論疏』などの他、浄土教の書も多い。法蔵の思想にも影響を与えたという。異称は青丘大師、黄龍大師。
  • 義湘(625-702):朝鮮華厳宗の事実上の開祖。661年、入唐して至相寺で智儼に師事。671年帰国。浮石寺など華厳十刹を建てた。多くの弟子を育て、朝鮮仏教に与えた影響は少なくない。『華厳一乗法界図』で、華厳経を210字の図印にまとめ、これを行道しながら唱える実践行を提唱。高麗時代の粛宗6年(1101)、円教国師の号を贈られた。法蔵からの書簡『寄新羅義湘法師書』が日本に伝わる。日本の明恵が伝記絵巻『華厳宗祖師絵伝』(華厳縁起)を製作。異称は浮石大師。
  • 勝詮:新羅の僧。法蔵の弟子。葛項寺を創建。
  • 均如(923-973):新羅末期・高麗初頭の僧。朝鮮華厳宗の中興と呼ばれる。帰法寺に住した。南岳派北岳派に分かれていた華厳宗をまとめた。
  • 義天(1055-1101):高麗王朝の文宗の王子。朝鮮天台宗の開祖。1085年、入宋して慈弁従諫に天台教学を、晋水浄源に華厳教学を学ぶ。帰国して興王寺慶南・海印寺に住す。開城・国清寺を創建。

日本

南都仏教の人物旧跡も参照。

  • 道慈(?-744):八十華厳を招来。
  • 良弁(689-773):東大寺の開山。
  • 審祥(生没年不詳):日本華厳宗の開祖。法蔵に師事。大安寺の僧侶。新羅人という説もある。
  • 慈訓(691-777):審祥の跡を継いで、『華厳経』の講義を開く。通称「華厳講師」。
  • 道セン(702-760):天平8年、華厳宗経典を伝える。
  • 実忠(726-?):東大寺修二会の創始者。
  • 鏡忍(?-784):良弁の弟子。
  • 普機(生没年不詳):天長7年(830)、六本宗書の一つ『華厳一乗開心論』を著す。
  • 道雄(?-851):海印寺開山。空海の高弟だが、長歳に華厳宗を学ぶ。
  • 円超(861-925):海印寺良緒に学び、東大寺でも学ぶ。延喜14年、醍醐天皇の命で『華厳宗章疏並因明録』を提出。
  • 光智(894-979):東大寺尊勝院の開山。良緒に学ぶ。
  • 景雅(1103-1185):
  • 重源(1121-1206):東大寺大勧進。東大寺を復興。
  • 弁暁(1139-1202):尊勝院を再建。
  • 明恵(1173-1232):高山寺中興。
  • 宗性(1202-1292):
  • 凝然(1240-1321):東大寺の学僧。戒壇院2世。唐招提寺28世。伊予国越智郡出身。戒壇院を復興した円照に師事。華厳を宗性に学び、浄土宗や禅宗も修める。博覧強記で千巻以上の著作を記したという。京都金山院に葬られたという。国師号が与えられた。代表作は『八宗綱要』だが、華厳関係では『探玄記洞幽鈔』『五教章通路記』『三国仏法伝通縁起』などがある。示観房。
  • 禅爾(1252-1325):久米田寺を復興する。
  • 俊才(1259-1353):東大寺大勧進。後醍醐天皇の戒師となり、国師号を賜ったという。晩年は武蔵・称名寺に住す。
  • 潭睿(1271-1346):称名寺長老3世。下総・東禅寺を経て武蔵・称名寺を継ぐ。湛睿。
  • 総融(?-1386):東大寺大勧進や戒壇院長老を務めた学僧。1000巻に及ぶ経典注釈書を書いたという。惣融。
  • 志玉(1383-1463):応永24年(1417)、明に渡る。明の太宗に『華厳経』の講義を行い、普一国師の号を賜る。帰国後、東大寺戒壇院長老。称光天皇から改めて国師号を賜る。著書に『華厳五教章見聞』。
  • 公慶(1648-1705):東大寺大仏殿を再建。
  • 鳳潭(1654-1738):京都・華厳寺開山。『華厳五教章匡真鈔』『起信論義記幻虎録』

流派

朝鮮

  • 北岳派:浮石寺
  • 南岳派:華厳寺

日本

  • 本寺派尊勝院流:東大寺尊勝院を中心とする流派。
  • 本寺派戒壇院流:東大寺戒壇院を中心とする流派。凝然。
  • 末寺派:高山寺を中心とする流派。明恵。
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